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第二百三十一章 折り鶴のメッセージ  10.王都イラストリア 国王執務室~空白の語るもの~(その3)

「……という感じに深読みはできますが、空白部②から直接に得られる情報はこれくらいでしょう。③に移りたいと思います」

「③か……これもさっきと同じように、或る程度(まと)まった文章が消されてるみてぇだな」

「そうですね。そこから直接に読み取れる情報は無いようですが……削除部の後に続く文章が少し気になります」

「ほう?」

「考え過ぎかもしれませんが……〝正方形の紙一枚を折って、切る事も貼る事も無く作る〟という(くだり)に、体系化された技術の存在を感じるんですよ。(こと)に、他の三つの鑑定文にも同じような言い回しがあったとなると――ね」

「それが何を……いや……Ⅹめの祖国では、紙をこのような形で用いる技術が発達しておる、そう言いたいのじゃな? 卿は」

「つまり……紙工芸が発達しているからには、その母体となる製紙技術もそれ相応に発達している……という事か」

「そう考えると、消された箇所ってなぁⅩの野郎の祖国に関する情報だったって事か」

「成る程、Ⅹめが隠そうとするのも当然じゃの」



 ――と、これに関しては見事にクロウの意図を見抜いていた。



「……④と⑤に移りましょう。互いに近接した位置にありますから、これらは一纏(ひとまと)めにして検討したいと思います」

「異存は無ぇが……しかしこりゃ、空欄が無くても綺麗に文脈が繋がってんな」

「えぇ。文章構成上は無くても構わない修飾語であった可能性もありますが、現実にⅩによって消されている訳ですから、そこに何らかの重要性はあった筈です」

「ふむ……案ずるに、④は軽銀の修飾節、⑤は〝薄い板〟の修飾節であろうかの」

「いや、両者の位置関係を見るに、④も⑤もともに軽銀の修飾節という可能性もあるのではないか?」

「けど……Ⅹの野郎、軽銀の何を隠したがってんですかね?」



 ローバー将軍の指摘を受けて、他の三人も考え込む。軽銀は確かに珍しい金属であるが、それが災いして逆に利用法が確立していない……少なくともイラストリア王国においては。



「軽銀の活用法に関して隠しておきたかったという事か? 確かに解らぬでもないが……」

「こうして軽銀細工の現物を送って来てるんですぜ? 隠すも何もねぇでしょうが」

「ふむ……ミスリード――という事は考えられぬかの?」

「薄っぺらくして細工に使う以外に、もっと有益な使い途があるって事ですかぃ? けど、何でそんなややこしい真似を? もちっと手頃なもんを送って寄越(よこ)しゃいいでしょうが」

「Ⅹの謎掛けなのかもしれませんね」

「謎掛け?」

「てぇと……本命は薄っぺらくしてからの加工法だが、それ以外にも使(つか)(みち)があるって事を示唆してやがんのか?」



 ――違う。


 クロウは単に「異世界」とか「地球」とかいう不穏な文言を削除したかっただけだ。そこにそれ以上の意図など無い。

 しかし、例によって例の如く、四人組はクロウの思惑(おもわく)を深読みした。

 (クロウ)の上から目線――クロウにそんなつもりは無い――に不機嫌なローバー将軍だが、



「あー……よいかな?」

「陛下?」

「何かご意見でも?」

「いや……余は単純に盗み見対策かと思っておったのだが……」

「盗み見対策?」

「――ですか?」



 いきなり別視点からの指摘を受けたウォーレン卿も、珍しい事に目をパチクリとさせている。



「うむ。ウォーレン卿やイシャライアはその場に居合わせなんだので解らぬのかもしれぬが……学院より派遣された術者も、簡単に改竄(かいざん)の痕を見抜いた訳ではない。じっくりと腰を据えて眺めておった」

「……確かにそうでございましたな」

「つまり……どっかの不心得者がチラリと盗み見しただけじゃ、これが改竄(かいざん)されてる事までは気付かねぇ筈……そう(おっしゃ)りてぇんで?」

「考えられぬ事ではないであろう?」



 確かに考えられぬ事ではない。――が、クロウが考えていた事でもない。



「……あの(したた)かなⅩなら、それらを全て考慮した上で、こういう手を打ってきたとしても驚きませんね」

()もありなん、と言いたいところじゃの」

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