第二百二十九章 イスラファン南街道安全保証計画 2.悪魔の不在証明(その2)
本日21時頃に、死霊術師シリーズの新作「墓室の闖入者」を投稿します。四話構成で一日一話、21時頃に更新の予定です。宜しければご笑覧下さい。
『全く……こっちが態々気を遣って、南街道から離れるように「百鬼夜行」の進路を取ってやったというのに……何で余計なところに気を回すんだ、あいつらは』
「百鬼夜行」を南下させないとクロウが決断した根拠は、南街道ではなくイスラファンの南にあるアムルファンを巻き込まないための配慮ではなかったか――と、端で聞いている爺さまなどは思ったが、一々それを指摘するような馬鹿はしない。騒ぎを拡大させたくないという方針に違いは無かった訳だし。
それに――態々余計な炎を掻き立てるような真似をしたナイハルの金貸しどもに、二言三言ほど物申してやりたいのは、爺さまにしても同じである。
抑の話、ダンジョンなんて話がどこから湧いて出たというのか? その大元を潰しておかないと、クロウ言うところの〝証明〟も、説得力を欠くのではないか。
『余韻を持たせた終わり方にしたのが、裏目に出ちゃったんですかねぇ……』
『演出としてはぁ、悪くなかったとぉ、思ぅんだけどぉ』
『こう……エンディングに〝Fin?〟って出るような感じだよね』
二十一世紀サブカルチャーに毒されたらしき従魔たちであるが、会話の要点だけを取り上げてみれば、それほど的外れな事は言っていない。
『要は白黒をハッキリさせろという事か』
『誤解の生じる余地の無いほど明確に――という事でございましょうな』
そうなると問題は……
①イスラファン南街道は安全であるという証拠を用意する事。
②イスラファンの騒ぎにダンジョンが関与していないという証拠を用意する事。
③それらを疑いの無い形で周知させる事。
……というところに収束するであろうか。
『ですが……①と②はともかく……③はかなり……難しいのでは……?』
噂を流す事ぐらいならできなくもないだろうが、その噂が信じてもらえるかどうかは別問題である。権威の裏付けの無い噂は、得てして黙殺されがちなものだ。
『まぁ、実際には〝権威がある〟ように見えるだけでいいんだがな』
『身も蓋も無い言い草じゃのぉ……』
『けどマスター、そういう〝権威〟っぽいところに、コネとか、あります?』
『無いな』
強いて挙げるとすれば、ノンヒューム連絡会議かイラストリア王国くらいだろうが、
『できるできないを別にしても、そういう宣言を出すのはおかしいだろうが』
問題が起きているのはイスラファンの南街道、イラストリア王国が口を挟む筋合いは無いし、ノンヒューム連絡会議にしても、
『ダンジョンとの関連を疑われるような真似はさせられん』
『ですよねぇ』
『しかし……そうなると、じゃ』
『疑いの余地無く信じさせるというのは……』
どう考えても無理筋ではないか――と、手詰まり感が支配的になったところで、
『マスター! こういう時は「正義の味方」ですよ!』
『……正義の味方だと?』
キーンがまたしてもとんでもない事を言い出したようです。




