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第二百二十六章 「岩窟」を巡る者たち 13.クロウ(その2)

『……計画の盲点になっていた理由は解ったが……このまま放って置く訳にもいかんよな?』

『我々だけの問題ならともかくとしまして……』

『テオドラムが何か画策している可能性があるとなると……』



 「災厄の岩窟」を任せているケルからの報告に拠れば、テオドラムの兵士たちが開削に邁進しているのは非ダンジョン領域であり、ダンジョンの魔力の影響など受けていない筈の場所である。(ひっ)(きょう)、〝ダンジョンの魔力を浴びて変成した鉱物〟など存在する筈が無い。



(しかし……テオドラムの連中が、ダンジョン内で「(きん)」の採集(・・)に励んでいるという報告を受けたばかりだしな……)



 「採掘」ではなく「試料の採集」としか思えない行動を取っているという報告を考え合わせると、「連絡会議」から上げられてきた仮説も(あなが)ち無視できなくなる。


 そう言えば……



『……「連絡会議」の連中が、この話を俺に振ってきた事については、どう考える?』

『……申し上げにくい事ではございますが……』

『バレてるんじゃないの? 「岩窟」の主がクロウだって事』

『やっぱりか……』



 ホルンの前では飽くまで「精霊術師のクロウ」として振る舞ってきたつもりだが、シャノアがあっけらかんと言い放ったように、どうやらその正体も看破されつつあるらしい。



『まぁのぉ……おぬしがテオドラムへの嫌がらせに邁進しておるのとほぼ時を同じゅうして、テオドラムへの嫌がらせとしか思えんダンジョンが現れればのぉ……』

『無関係と思わない方がおかしいでしょ?』

『ダンジョンマスターだと気づいているかどうかはともかく……』

『マスターが、「岩窟」と何らかの関係があるって事には』

『薄々ぅ、気づぃてるんだとぉ、思ぃますぅ』

名指(なざ)しで言わないのって、エルフたちの優しさじゃないの?』

『むぅ……』



 遠慮会釈の無いシャノアの指摘に(いささ)か凹むクロウであったが、目下の議題はそれではない。正体のカミングアウトについては後で考えればいい。ノンヒュームたちが気遣って知らぬ振りをしていてくれるのなら、今はその優しさに甘えるとしよう。



『……少々話が()れたが、本題に戻るぞ。ダンジョンの魔力で鉱物が変成する可能性についてはどう思う? この際、テオドラムの事は()いといてだ』



 話を振られた一同も、(しばら)く考え、顔を見合わせていたが、



『実際に魔鉄という実例が存在している以上、無視はできないかと』

『だよなぁ……』



 一同を代表する形でネスが返した回答に、クロウとしても同意するしか無い。

 もはや調査は待った無しの情勢であるが、では具体的にどうするのかとなると問題があった。


 ――ダンジョンの魔力で鉱物が変成する。


 この事自体は別におかしな事ではない。何しろダンジョンの壁自体が、ダンジョンの魔力によって土面が変質したものなのだ。土中の鉱物などが変成していたとしても、別段驚くには当たらない。


 問題なのは、その〝変成した〟鉱物が資源として有用なのかそうでないのか、仮に土魔法を使ったとしても、その点が判らないという事である。ダンジョンロードたるクロウにしてすら、完全に想定外かつ専門外の問題であった。

 ドワーフなどの専門家に判断を委ねるしかないが、クロウの眷属にドワーフはいないし、外部の専門家を引き入れるなど論外である。

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