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第二百二十六章 「岩窟」を巡る者たち 10.マナステラ~王国上層部~(その2)

 ――マナステラのドワーフたちから教えを受けていた人族(ヒューマン)の冶金技師が、いつの間にか姿を消していた。


 これだけならそこまで気にするには及ばないかもしれないが、



「……姿を消した時期が時期な上に、商業ギルドの紐付きだったとなると……」

「うむ、安易に見過ごすのは(まず)いかもしれん」

「先程の可能性の検討も、この件を念頭に置いた上でするべきだろうな」



 ――と、いう事で仕切り直しと相成った訳だが……商業ギルドという要因(ファクター)が一つ加わっただけで、検討すべき内容は一気に複雑化したのであった。



「まず、ドワーフと商業ギルドが、テオドラムなりマーカスなりから情報を得た場合についてだが」

「両者が同一の情報源からその情報を得たとは限らん訳だな?」

「あぁ。それぞれが別個の情報源から情報を得た場合も考えねばならん」

「テオドラムとマーカスが歩調を合わせるようにして、それぞれ別個に情報を漏らしたというのか?」

「いや、相済まんが……情報漏出の時期が厳密に同じ頃なのかどうかは判らんのだ。商業ギルド紐付きの男はいつの間にやら姿を消しておったし、ドワーフたちに連絡が来た時期も正確には特定できておらん。それに情報なり指示なりが、どうやって伝えられたかという問題もある」

「あぁ……伝令が運んで来たのか、飛竜便を使ったのか、はたまた魔導通信機を用いたのかによって、所要時間も違ってくるか」

「そういう事だ。面倒でも全ての場合を考えねばならんだろう」



 (いささ)かげんなりした表情を浮かべ、一同は改めて事態の検討に立ち戻ったのだが……



「えぇと……テオドラムがドワーフと商業ギルドに情報を与えた場合と、マーカスがドワーフと商業ギルドに情報を与えた場合と、テオドラムが商業ギルドに……」

「……ちょっと待て。何かに書き記して(まと)めんと駄目だ。聞いているだけでこんがらがってくる」



①テオドラムがドワーフと商業ギルドに情報を与えた

②マーカスがドワーフと商業ギルドに情報を与えた

③テオドラムがドワーフに、マーカスが商業ギルドに情報を与えた

④テオドラムが商業ギルドに、マーカスがドワーフに情報を与えた



「この四つか?」

「いや……最初に情報を受けた商業ギルドなりドワーフなりが、もう一方に情報を伝えたという可能性も、無視する訳にはいかんだろう」

「……ちょっと待て。そうすると……」



⑤テオドラムから情報を得た商業ギルドが、その情報をドワーフに伝えた

⑥テオドラムから情報を得たドワーフが、その情報を商業ギルドに伝えた

⑦マーカスから情報を得た商業ギルドが、その情報をドワーフに伝えた

⑧マーカスから情報を得たドワーフが、その情報を商業ギルドに伝えた



「おぃ……」

「これらを全部、検討せんといかんのか?」

「言いにくいのだが……商業ギルドとドワーフが得た情報が同じものだという証拠は無い事も……忘れる訳にはいかん」



 一同が無言で机に突っ伏したのを、一体誰が責められようか。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 迷走のドミノ倒し。 [気になる点] 消えたヒューマンの弟子は、 ⑨情報を得たドワーフ考察から、  その情報を商業ギルドに伝えた なんじゃないかと。 [一言] クロウは連絡を受けてか…
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