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第二百二十六章 「岩窟」を巡る者たち 9.マナステラ~王国上層部~(その1)

 マナステラのドワーフたちから注進を受けた連絡会議の動きはさて()いて……その動き自体は割と早くマナステラ王国の知るところとなっていた。


 このところ空振りが目立つマナステラであるが、彼らとて無能者の集団ではない。それなりの目と耳を――「頭」の事は()いといて――備えている。そしてそれらの目と耳の向く先というのが、多くの場合ノンヒュームなのであった。

 何しろマナステラという国は、ノンヒュームとの友誼を国是として標榜しておきながら、下手を打ってその〝友誼〟を微妙なものとした前科がある。同じ愚かな(てつ)を踏まないためにも、ノンヒュームたちの動向に目と耳を配るのは当然であった。



「マーカスのドワーフからこちらのドワーフへ、何やら問い合わせが来たらしい」

「ほぉ……ドワーフへの問い合わせというからには、金属とか鍛冶関連だと思うが……問い合わせてきたのもドワーフなのか?」

「マーカスのな。あの国にもドワーフはいるが、わが国と較べるとその数は少ない。知恵袋の数も足りぬのだろうさ」

「そうかもしれんが……金属の専門家として自他共に認めるドワーフが、他国の同族に問い合わせか? 何やら面白そうな……事によると剣呑(けんのん)な話だな?」

「ふむ……〝耳〟が良い仕事をしたようだな」

「いや、それほどの事でもないらしい。何でも、ドワーフたちが小声で話していたのを(たま)さか耳にしたそうだ。……ドワーフ基準の〝小声〟でな」



 ――本質的に地声の大きいドワーフでは、こういう形での情報漏洩も珍しくない。ドワーフたちもそれは自覚していて、重要な話は基本屋内で口にするようにしているのだが、この時は偶々(たまたま)窓が開いていたらしい。

 裏事情を聞かされた男も複雑な表情であったが、



「問い合わせの内容までは判らんか?」

「さすがにそこまではな。往来を通りすがりに小耳に挟んだだけらしくてな。人目のある中で歩みを停めて、耳を澄ます訳にもいかなかったそうだ」

「うむ……」

「だが、ドワーフへの問い合わせというからには、十中八九は金属絡みだろう。それも、マーカスのドワーフからの問い合わせとなると……」



 態々(わざわざ)口に出すまでも無い。「災厄の岩窟」絡みのネタに決まっているではないか。



「……あそこでは物議を(かも)す『金属塊』が見つかっているからな……」



 ――黄金のゴーレムとか、銅製の〝屍体〟とか、ミドの古代金貨とか。



「まぁ、あそこでおかしなものが採れるというのは、まだ解る。解らんのは……」

「あぁ。ドワーフたちがどうやってそれを知ったのか――そこだろうな」



 あの「災厄の岩窟」が、その名に(たが)わず面倒な金属塊を産するのは広く知られているが、それが明らかになったのはずっと前の事。今更慌てて注進に及ぶ理由が無い。問い合わせの内容は、それとは別の新事実の筈。それくらいは子供にでも見当が付く。


 ただ……「災厄の岩窟」は目下マーカスとテオドラムの監視下にあり、民間人は内部に立ち入る事はできない筈だ。なのにマーカスのドワーフたちは、どうやって〝新事実〟を知ったのか。



「……考えられる経緯は二つ。①テオドラムとマーカスの(いず)れかから、岩窟内部の情報を教えられた、②その情報は岩窟外で得られた――これしかあるまい」

「うむ……」



 この二つのケースについてそれぞれ検討してみようかという流れになったところで、



「……すまんが、一ついいだろうか?」



 手を挙げた一人がもたらした情報は、一同を困惑させるに充分なものだった。



「……商業ギルド?」

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