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第二百二十六章 「岩窟」を巡る者たち 7.マナステラ~ドワーフたち~(その1)

 「災厄の岩窟」におけるテオドラムの挙動に関して、一つの可能性――ただし真実とは大きく異なる――に気付いたマーカスのドワーフたちであるが、さすがに憶測だけで臆断の挙に出るのには臆したと見えて、この仮説を他所(よそ)へ持ち込む事にした。彼らが丸投げした先は、マナステラに在住するドワーフたちであった。

 何しろマナステラは自他共に認めるほどノンヒュームの人口が多い。つまりはドワーフの人口も多い。ゆえにこの手の仮説に対しても、思案する頭には事欠かないだろうと考えたためである。


 そしてそのドワーフたちはと言えば、マーカス在住の同胞が投げて寄越した問題を前に考え込んでいた。



「ダンジョンの魔力による鉱物の変成……確かにあり得ん事ではない……」

「うむ。……ちゅうか、実際に魔鉄という実例があるからのぅ」

「じゃが、魔力によって(きん)を生み出し得た者は、今だ(かつ)ておらんと聞くが?」

「……あの()(じん)は別口なのかもしれんじゃろうが」

「それに、テオドラムが見つけたものが真実(きん)であるとは限らん。商人(あきんど)どもがテオドラムに(たばか)られた――という事も考えられるでのぉ」

「問題はじゃ、ダンジョン産の変成鉱物などという可能性を前にして、(わし)らドワーフはどうすべきか――という事じゃ」



 (かしら)()った一人のドワーフの言葉に、居並ぶ面々も重々しい(うなず)きを返す。それが(きん)かどうかは主要な問題ではない。未知の鉱物が存在する可能性がある――それこそが、ドワーフたちにとっては大問題なのであった。



「錬金術師に訊いても、この方面の研究は進んでおらんという話じゃったからのぉ……」

「無理もなかろうて。実験室で再現できるようなものでもないんじゃからの」

「全くじゃ。(たと)えて言うなら、実験室で魔石を創ろうとするようなものじゃ」



 ……どこぞのダンジョンロードが気楽に魔石を量産しているそうだが、アレは決して普通の事ではない。テオドラムは苦心惨憺の末に人造魔石の開発に成功しているが、それとて簡単にできるものではないし、テオドラムはその技術を厳重に秘匿しているのだ。


 実験室レベルでの再現や検証が不可能となると、膨大な魔力が澱んでいる場所、例えばダンジョンなどでの調査に頼るしか無いのだが、(もと)より気軽な調査や探索が不可能なのもダンジョンという環境である。(ひっ)(きょう)、この方面の研究は遅れている。テオドラムがこの分野の研究に先鞭を付けたというなら、鉱物の専門家を自認するドワーフたちにとっては、到底看過する事のできない一大事である。



「……一つ気になるのは、あの『岩窟』にそこまでの魔力の(よど)みがあるのかという点なんじゃが……」



 これが他のダンジョンであれば、長い年月の間に濃集した魔力という事も考えられるが、あの「災厄の岩窟」は一夜にして出現したダンジョンである。長期に(わた)って少しずつ魔力が蓄積した……などという事は有り得ない。

 巨大な岩山にしてダンジョンが一晩でできあがったのだから、そこに強大な魔力が介在したのは疑い無いが、その一方で出現直後から、テオドラムとマーカスの兵士がダンジョン内を探索してもいる。



「鉱物を変成させるほどの魔力の(よど)みがあれば、人族(ヒューマン)であろうとノンヒュームであろうと、影響を受けるのは免れ得ん筈じゃが……」

「そういう話は聞いた事が無いのぉ……確かに」

「しかし……あのダンジョンは色々と規格外じゃからのぉ」

「うむ。何しろ一夜にして現れたダンジョンじゃ。魔力の(よど)みも一夜にして消えたのかもしれん」

「現実に妙な結晶が採れてもおるしの」

「あぁ……確かに。あれがあったか」

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