表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1152/1809

第二百二十五章 アバン探訪 14.雅びな火種(その3)

 再び場面変わってこちらは――何がどうなったのか判らぬままに「(まよ)()」に迷い込み、得体の知れない、しかし何やら有り難そうな工芸品(おりづる)を手にしたダールとクルシャンクである。折り鶴の入った箱を手に取った時点で再び濃い霧に巻かれる事になり、改めてその霧が晴れたかと思えば……



「……ちゃんと戻って来たみたいだな」

「……だな。野営の準備をしてた場所だぜ」



 妙な(はざ)()に迷い込む前に整えていた野営の支度が、そのままちゃんと残っている。置いていた荷物も無事なようだ。迷い込む前と較べて、何一つ変わったところは……



「……いや、そろそろ()()が消えそうになっているな」

「ま、何だかんだで時間を食ったからな。別におかしなところは……どうかしたか?」



 妙な表情で黙りこくっている相方(ダール)の様子を見て、どうかしたのかと(いぶか)るクルシャンク。こいつはさっきもおかしな事を言っていたし、ここでも何か気付いたのか?



「あぁいや……こっちではちゃんと時間が経っていたんだなと……そう思ってな」

「……あ?」



 またぞろおかしな事を言い出したと妙な目付きのクルシャンクに、苦笑を浮かべたダールが説明を始めたのだが……



「いやな。この手の異界訪問の話だと、迷い込んでいるうちに下界では大幅に時間が経過していた――とか、逆に異界で長の時間を過ごしたにも(かか)わらず、下界ではほとんど時間が経過していなかった――とかの展開がお約束なんだが……今回はそうじゃなかったんだと思ってな」

「あぁ?」



 ……単にクルシャンクが頭を抱えるだけに終わったようだ。



「冗談じゃねぇぜ……『(まよ)()』ってなぁそんなに物騒なもんなのかよ……」

「いや、噂でもそういう話は出て来なかったようだし、まぁ大丈夫だろうとは思っていたが……実際に確かめた訳じゃなかったからな」

「……んで、今回実地に確かめられたんで、ご機嫌って訳かよ……」

「そういうつもりではなかったんだが……こういう不可思議な出来事というのは、何かこう……ワクワクしないか?」



 げんなりした様子のクルシャンクを見て、ダールはその心中を吐露したのであるが、



「俺ぁもちっとこぅ……白黒ハッキリしてる方が好い」



 クルシャンクからの共感は得られなかったようだ。



「それじゃ、もう少し地に足の着いた……現実的な話をするか。今回この工芸品を貰った事で、俺たちへの指示はどう変わると思う?」

「あぁ? 何か変更でもあるってのか?」

()く解らん場所で、()く解らん工芸品を貰ったんだぞ? 一刻も早く持ち帰れ……なんて話になるとは思わないか?」

「お♪ そいつぁ(きっ)左右(そう)じゃねぇか」



 まだ本国に連絡も取っていないというのに、早くも帰る気満々のクルシャンク。苦笑しつつそれを(なだ)めつつ、いざ魔導通信機で連絡を――としかけたところで、



「――ちょいと待った。どうやらお客さんみてぇだぜ?」



 新たな登場人物がこの場に参入したのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ