表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1151/1809

第二百二十五章 アバン探訪 13.雅びな火種(その2)

(ぬし)様、あれって、アルミ(はく)ってやつですか?』

『お、察しが良いなウィン。だが惜しい。工作用のアルミ板だな』



 ただの折り紙では曲が無いとでも思ったのか、クロウは小学校の工作などで使う板金工作用のアルミ板、それも折り紙に使えるような薄いものをどこからか入手してきて、それで鶴を折っていたのである。しかも念の入った事に、ツートンカラー版の鶴を折るために、態々(わざわざ)表裏で色の異なるものを買い求めてくるという()りようであった。



『……クロウよ、それはつまり、あの「折り鶴」とやらは……?』

『……異世界の素材でできている――って事? クロウ』



 そんな面倒な代物を、何で態々(わざわざ)イラストリアの密偵に渡したのか。胸倉を掴んで難詰しそうな勢いの爺さまとシャノアにニヤリと笑い、



『安心しろ。確かに地球から持ち込んだものだが、アルミ自体はこっちの世界にも存在する。ちゃんと【鑑定】スキルを使って確かめた』

『……本当でしょうね?』

『あぁ。こっちでは「軽銀」というらしいな』

『……軽銀?』

『お待ち下さい。それは――』

『うん? どうかしたか?』



 「軽銀」という名前に反応したダバルとネスに、不思議そうな声で問いかけるクロウ。軽銀はこちらの世界にもある筈だろう。ちゃんと【鑑定】にそう表示されていたぞ?



『いえ……確かに元素としては存在していますが……』

『その……精錬なり何なりして、素材という形に加工したという話は聞いた事が……』

『……無い……のか?』



 「元素」として存在しているからと言って、それが「素材」の形で存在しているとは限らない。クロウ痛恨の思い込みであった。

 ()して、一応は金属であるアルミ(それ)を、薄いが丈夫な紙状に加工するなどというのは、こちらの世界の技術水準を遙かに凌駕した行為である。



『……まぁ……どこかの何者かが素材化に成功した……と、思ってくれるかもしれませんし……』

『異世界から持ち込んだ――などというよりは、現実味のある想定じゃろうな』

『……あれ? でもマスター、異世界から持ち込んだものって、【鑑定】結果にそう表示されるんじゃなかったですか?』



 キーンの言葉を耳にして硬直した一同が、揃ってギ・ギ・ギという感じにクロウの方へ(こうべ)を巡らせるが、



『ふふん、そこに抜かりは無い。実は先日、ダンジョンマジックが進化してな』

『……ダンジョン……マジックが……』

『進化しちゃったんですかぁ?』



 幾許(いくばく)かの警戒を(にじ)ませながら、眷属たちがクロウにその仔細を確認したところ、



『……【鑑定】の……結果を……改竄(かいざん)……できるのですか……』

『おう。一度ダンジョン化してやる必要はあるんだがな。いつの間にかダンジョンマジックに、「ダンジョン属性の編集」という項目が追加されててな』

『ははぁ……』

『選択するとエディター画面が起動するから、これで属性を編集して、異世界だの何だのという記述を全部消しちまえばいいんだ。その後でダンジョン化を解除してやれば、あら不思議、物騒な記述なんか何も無い、すっきりした折り鶴が残るだけだ』

『ほほぉ……』



 話だけ聞くと()(てつ)も無く大それた事のように思えるが、別に世界の(ことわり)に干渉するようなものではない。局所的に鑑定を阻害する効果を付与しているだけだ。高い【鑑定】スキルを持つ者は往々にして他者からの【鑑定】を弾いたりするが、要はそれと同じである。


 ――とは言うものの……折り鶴をダンジョン化するという、一体誰得なのかと言いたくなるような行為についてはスルーするとしても、【鑑定】スキルを欺くというだけでもう大概な(しょ)(ぎょう)である。本当にそんな事ができるのかという気もするが、何よりクロウは自信満々であるし、これまでのクロウの前科に(かんが)みれば、そのくらいできてもおかしくない気もする。


 ……なので、【鑑定】スキルを持つネスやダバルも、ついそのままにスルーしてしまった。まぁ(もっと)も、折り鶴の現物は既にダールとクルシャンクの手にあり、今更【鑑定】をかける事はできないという事情もあったのだが……手抜かりと言えば手抜かりであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] まさかアルミとは。 科学技術が無いと精製は困難な物を なんでチョイスしたのかな? [気になる点] シュガートレントから作られる砂糖も ダンジョンマジックで普通の砂糖として 世間に流通させる…
[一言] まーたやべぇ物にやべぇことを……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ