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第三十一章 冒険者ギルド 2.ヴァザーリ伯爵領冒険者ギルド

当のヴァザーリの冒険者たちはどんな反応を示しているのか。今回はその話です。

 ヴァザーリの町を六体のアンデッドが襲った。


 一体は光り輝く透き通った骨格に聖気を(まと)ったスケルトンドラゴン。残り五体は他の町に所属していた先代勇者のアンデッド。


 ヴァザーリの冒険者ギルドはこの事態にどう対処すべきか。議論は紛糾(ふんきゅう)して収束する気配を見せなかった。



 新勇者たちの尻馬に乗っかる形で教会から獣人村の討伐依頼を受けた冒険者たちは、この依頼がどう納まるのかを気にしていた。



「……少なくとも、依頼者である教会の指示で町に戻った時点で、獣人村の討伐依頼は取り下げられたと見なされる、というのがギルドとしての見解だ」

「……違約金はどうなるんだ?」

「正直、微妙なところだ。ギルドの見解に従えば、受注済みの依頼が発注者の都合で取り下げられた場合、発注者には受注者に対する違約金支払いの義務が発生する。ただ、教会側は正式な手続きを経て取り消した訳じゃないからな。依頼は継続中だと主張している。しかしだ、タルガン、お前一人で獣人討伐に向かうつもりか? 勇者様方は怪我で不参加だぞ?」

「冗談じゃねぇ。もしあんな化け物に出くわしたら、生きて帰れる気がしねぇ」

「ギルドもそう判断している。なので、ギルド員を守るためにも、討伐依頼は取り下げられたとの立場を取っている」


「で、さっきの話に戻るんだが、違約金はどうなる?」

「今回はギルドが立て替えておく。受注票を持って受付で手続きしてくれ」



 タルガンと呼ばれた冒険者が一応納得して引き下がると、今度は他の冒険者が質問してくる。



「教会は今後どうするつもりだ?」

「ギルドの見解に不服だとしても、それを蒸し返す事はないだろう。あれが神の使いなのか化物なのかは知らんが、勇者になる前はAクラスの冒険者だったカルスたちがこっぴどくやられた以上、こちらに対抗する手だてはない。ギルドとしても、教会としても、な」

「じゃあ、獣人どもはこのままのさばらせておくのかよ。ヤルタの神の教えはどうなる?」

「ドーズ、お前が殉教者になりたいってんなら止めはせん。だが、ギルドを殉教に巻き込むな」



 こう言ったところで職員の男は、他の冒険者たちを振り返った。



「聞いての通りだ。お前たちはどうする?」



「俺たちに何ができる?」

アレ(・・)が出てきたらその場で終わり。出てこなくても、勇者様のカルスたちを欠いた状態で獣人村の討伐は無理だろう」

「アンデッドが襲ってきたんだ。ネクロマンサーがこの騒ぎの裏にいるのは間違いない。下手をすると俺たちもアンデッドにされるぞ」

「へっ、死んだ後で亜人どもにこき使われるなんざ、願い下げだぜ」



 口々に好き勝手な事を言っている冒険者たちを横目で見て、職員の男はその場を後にした。静かにギルドマスターのそばへ近づいて小声で問う。



「実際のところ、獣人たちはどう出ると思います?」

「……向こうからこっちへ攻めてくる可能性も含めてか?」

「はい。ギルマスのお考えを聞いておこうかと」

「……単純な人数ではこっちの方が多いからな。闇雲に突っ込んでくる事ぁ無い、と言いてぇところだが、あのドラゴンが曲者だな。ただ、あのドラゴンはブレスを吐く時も住民を殺さなかったからな。こっちが仕掛けなきゃ向こうから仕掛けてくる事ぁない、と思いてぇんだが……」

「全ては獣人に対するこちらの態度次第ですか……」

「こっちから敵意を示さない限り現状維持じゃねぇかと思う。獣人たちも子育ての時期だからな。積極的にやり合うほど暇じゃねぇだろう」



 亜人たちは決して無力で従順な奴隷ではない。(いわ)れ無き暴力には力をもって報いる、独立不羈(どくりつふき)の民である。


 人間が亜人を見る目は、亜人蔑視の風潮が根強いここヴァザーリにおいてすら、少しずつ変わろうとしていた。

明日は挿話の形で投稿します。

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