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第二百二十二章 シェイカー討伐隊~侵掠者を討て~ 18.討伐戦顛末~誤解と迷推理のフーガ~(その8:イラストリア+α)

「だがよウォーレン、『ヰー』の黒幕がⅩだってなぁいいとして、あんなちっぽけな間道の封鎖に、Ⅹは何でまたあんな物々しいダンジョンを持ち出しやがったんだ?」



 以前から懸案になっていた問題であるが、この際改めて検討してみる気になったらしい。一見したところではテオドラムを包囲しているように見えるが、そうとばかり断定できない事は、既にウォーレン卿と検討済みである。



「地形的な制約もあって、テオドラムとヴォルダバンを結ぶ回廊は三つだけ。そのうちカラニガンの町の傍に『シェイカー』が、アバンの廃村に『(まよ)()』が現れている訳です。Ⅹは包囲陣を完成する事だけが目的で、街道の賑わいには興味が無かったという可能性もあります」

「ふむ……」

「もう一つ、これは後になって気付いた事ですが……改めてⅩのダンジョン――特にテオドラムを包囲しているダンジョンの位置を考えてみて下さい」

「「「む?」」」



 言われた三人がダンジョンの位置を思い浮かべる。「ピット」は我が国の南方にあり、「災厄の岩窟」はマーカスとの国境、「シェイカー」のアジトと「迷い家」は……!



「おい! まさか!?」

「テオドラムを包囲しているだけでなく、そのほとんどがテオドラムの領外にあります。それが自国を包囲するための拠点だと判っても、いや、その確証を得てすらも、テオドラムは国としてこれらを攻略する事はできません。そんな事をすれば、開戦待った無しです」

「むぅ……」

「Ⅹがそういう立地条件を狙ってダンジョンを造っていったとするならば、代替地を見つける事も容易ではなかった可能性があります」

「それがあの場所に(こだわ)り続けた理由か……」



 ――実際には違うのだが、言われてみればそういう風に思えるから不思議である。



「そこまでして拠点の維持と確保を狙ったとすると……」

「はい。テオドラムの包囲、もしくは通商封鎖という可能性が強まってきます」

「ダンジョンによる力業での封鎖がしにくいアムルファンは、贋金という手段で不仲にした訳か……見事なもんじゃのぅ」



 ――これで結論が出たのかと思った国王たちであるが、そう簡単に話を終わらせないのがウォーレン卿という人物であって……



「ただ……」

「「「――ただ!?」」」



 今度は何を言い出すつもりだと、呆れ・関心・立腹などが()()ぜになった声を上げる三人。



「『シェイカー』ですが……包囲網の一角を成す拠点としてあのアジトを用意したのなら、そこに配備された『シェイカー』が、何でまたあそこまで目立つ真似をしたのか――それが判らないんですよね……」

「「「う~む……」」」



 一つ説明を付けたかと思うと、どこかに説明の付けられない箇所が出て来る。(すこぶ)る付きの難問に、一同はうち揃って頭を抱えるのであった。



・・・・・・・・



 ところ変わってクロウが拠点とする「洞窟」では、クロウたちの反省会が開かれていた。お題は「シェイカー」アジトでの一戦である。



『やはり……ご主人様のトラップが凶悪過ぎたのでは……』

『トラップと言うのは自動反撃システムの事か?』

『いえ……それ以前……にも……』

『広場に辿(たど)り着くまでに、トラップに引っかかりまくってましたもんね』



 そのせいで、待ち構えていた戦闘員たちの失望落胆が大きくなっている。当初の目的である自動反撃システムの試験は一応済ませたものの、戦闘員たちのモチベが低下するのは、管理職(クロウ)としては望ましくない展開であった。



『……って、前にも似たような事を言ってたわよね?』



 ……「還らずの迷宮」のダンジョンモンスターたちの事だろうか?



『学習というものをせん男じゃのぉ……』

『いやっ! やつらだってこれで諦めたりはしないだろう。この次は装備と心構えを一新してやって来てくれる……筈だ』

『だと、いぃですねぇ』



 来ないというなら自らギルドに依頼を出してでも――などと、善からぬ陰謀を逞しくするクロウなのであった。

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