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第二百二十二章 シェイカー討伐隊~侵掠者を討て~ 12.討伐戦顛末~誤解と迷推理のフーガ~(その2:カラニガン)

「我々も最初は悩みました。ですが――やつらが我々と同じ事を考えていたとしたら?」

「――む?」



 自分たちと同じ事? つまり……大軍を差し向けて彼らを押し込め……



「……余さず根絶やしにしようと企んでいた……そうだと言うのか!?」

「確実に殲滅戦(せんめつせん)を展開しようとするのなら、兵力を狭い洞窟に分散させての戦闘より、大軍の運用に適した広い空間での決戦を望んだ筈です」

「うぅむ……」



 ――違う。

 クロウが望んでいたのは、飽くまで「自動反撃システム」の作動試験である。システム自体は途中の通路にも――小規模ながら――設置してあるが、より大規模で実例数の多い試験を希望したクロウが、実験場として広くて便利な大広間を選んだに過ぎない。



「そしてこれが、敵兵力が我々より遙かに強大であると判断した根拠の一つです」

「うぅむむ……」



 ……確かに「シェイカー」はそれなりの規模と能力を誇っている。根拠は明後日(あさって)の方向に間違っているが、結論が間違っていないのが不思議である。



「やつらがそういう(もく)論見(ろみ)を抱いていた以上、我々が……正確に言えば我々の分隊の幾つかが、洞窟内部への進入を断念するような事は、彼らとしても容認できなかった筈です。ゆえにこそ、致死性の低いトラップを用いて、我々の被害を抑えようとした。それ以外にやつらの不可解な行動は説明できません」

「うぅむむむ……」



 ――クロウが()(づか)ったのは、作動実験を適切に行なうために、被験者(モルモット)にストレスを感じさせない事である。無論、勝手に試験から離脱されては困るので、そのための配慮もした訳だが。

 ……そう考えると、この見解も(あなが)ち的外れとは言えないようだ。



「やつらがこのような作戦行動をとれた以上、(しか)るべき指揮系統が確立されていると考えるのが妥当でしょう」

「うぅむむむむ……」



・・・・・・・・



 同じような頓珍漢(とんちんかん)な問答が、ここカラニガンの冒険者ギルドでも繰り返されていた。



「つまり……『シェイカー』のやつらはお前らを奥の広場に(おび)き寄せて、そこで(まと)めて潰そうって(はら)だった……そう言うんだな?」

「あぁ、そうとしか考えられねぇ。やつら、(えら)く腕の立つ狙撃兵を、それもあちこちに何人も用意していやがった」

「狙撃兵だと?」

「あぁ。こっちが一発撃つ度に、四方八方から撃ち返してきやがった。それもど(えら)く正確にな。身を隠すのが少しでも遅れてたら、犠牲者はあれっきしじゃすまなかったろうぜ」


 ――クロウ設計の「自動反撃システム」は、まずは満足のいく結果を出した。全自動での反撃なため、(わざ)と狙いを外しての手加減などはできず、討伐隊はそれ相応の犠牲者を出している。

 それらの遺体は討伐隊が回収して持ち帰ったため、「ダンジョン」としての収益にはならなかったが、(もと)より「(こだま)の迷宮」はダンジョンである事を隠すという方針であったため、クロウも敢えて屍体を奪うような挙には出なかったのである。


 ちなみに、犠牲者の幾人か――と言うか、相当の部分――は「自動反撃システム」ではなく、他のチームの誤射や流れ弾によって死亡しているのだが……討伐隊の指揮官も、そんな事を馬鹿正直に白状したりはしない。何の確証も無い事だし。同士討ちなどありませんでした。



「……まぁ、こっちが素早く退()き下がったんで、『シェイカー』のやつらも追撃が間に合わなかったみてぇだ。各個に分かれて別々の経路から撤退したのも良かったんだろうな」

「……解った、ご苦労だった。死亡した連中の身内にゃギルドから見舞金を出すから、連絡先を(まと)めておいてくれ」

「あぁ、諒解した」


本日21時に死霊術師シリーズの新作を投稿の予定です。今回は「化かし合いのダンジョン」に登場した四バカパーティの逸話……と言うか、小咄になります。宜しければご笑覧下さい。

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