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第二百十九章 ベジン村異変(笑) 12.ベジン村「発」百鬼夜行~終幕(その1)~

死霊術師シリーズ新作「死霊術師のお仕事」も宜しければご覧下さい。

 〝怪異の去った〟ガット村で村人たちが途方に暮れている頃、そこから少し離れた地下では――



『……どうにか計画どおりに進みそうだな』



 地下に密かに伸ばした諜報トンネルを通じて村の様子を窺い、(しん)(ちょく)状況に安堵しているクロウたちの姿があった。



『ベジン村の時は設置が間に合わず、ぺルトや精霊たちに危険を冒させる羽目になったが、今度はちゃんと設置できたしな。思った以上に有効なのも確かめられた訳だし』



 ペルトというのはこの度正式にクロウの従魔となったフェイカーリザードの名前であるが……それを含めて舞台裏を説明しておこう。


 ベジン村の時は諜報トンネルの設置が間に合わず――と言うか、全員が脅かすのにノリノリで、そんな些事(さじ)まで気が廻らなかった――村の様子を探るのは一部の精霊と、【隠蔽】持ちでステルス能力に()けたフェイカーリザードに任せるしかなかった。ちなみにこの作戦参加を機に、フェイカーリザードはペルトという名を貰った訳である。


 余談ではあるがこのペルトという名前、見た目――フェイカーリザードの元となったソーニィリザードは地球のツノトカゲのような姿――に反してその能力はトゲトゲしいものでなく、石への擬態を得意とするのだと聞いたクロウが、最初は「岩石」を意味するペトロという単語を思い浮かべたのだが、そのままだとどこぞの殉教者っぽいので、少し変えてペルトとなったという経緯(いきさつ)がある。まぁ、クロウはそこまでの事情を説明するような事はしていないのであるが。


 閑話休題(それはともかく)、ベジン村での不手際の反省から、ここガット村では異変を起こすに先立って、村の地下に諜報用のトンネルを張り巡らせ、石などに偽装したマイクロフォンを通じて、村の様子を窺う事に成功している。この辺りの技術は既にオドラントで実用化している事もあって、クロウも慣れたものである。

 この諜報システムあればこそ、パン焼き(がま)のスタンピードなどという巫山戯(ふざけ)た騒ぎも起こし得たのであるが……



『今回は諜報システムを逆用して、声を響かせる事にも成功した訳だ』

『あの笑い袋というのは面白ぅございましたな』



 村人たちを不安に陥れた笑い声の正体は、現代日本でパーティグッズとして売られている笑い袋であった。大勢の笑い声が収録されたタイプである。

 その(ほが)らかな笑い声を諜報トンネルから響かせ、エコーの【音魔法】で屈折・拡大して、更に音源の位置を不明瞭にしたのである。ちなみにこれには、クロウの指示で風精霊たちも協力し、声の聞こえて来る方向を一層不明確にしていた。

 余談であるが、同時に大勢の笑い声を響かせるという笑い袋(まどうぐ)の能力に、エコーが密かにライバル心を燃やしているのであるが、それはクロウの関知するところではない。



『さて……後は終幕を演じるだけだな』

『八分どおり仕込みは終えておりますからな。まずは問題無く成功するかと』



・・・・・・・・



「じゃあ、この村じゃ何も起きてねぇって言うのか?」

「あぁ。(もっと)も、ここへ来る途中の道じゃ何やらあったみてぇだが」

「途中で?」



 ガット村での異変が終幕を迎え、どうやら本当に村を去ったらしいと判断できた時点で、ガット村からも警告の急使をネジド村へ派遣する事に決まった。ベジン村からの連絡がそうであったように、今更使いを出しても間に合わないのではないかとの意見もあったが、だとしても知らぬ顔をする訳にもいくまいという意見に押された形である。いざ自分たちがこういう立場に立ってみると、ベジン村の判断と処置は妥当なものであったと言わざるを得ない。

 ざまぁという顔をしていたベジン村からの使いであったが、今度はネジド村にまで同行するよう求められて渋い顔となる。とは言え、ベジン村での仔細を説明するとなると、自分が同行するのが最善というのも理解できる。渋々同意してここまでやって来たのであったが、ネジド村では何の異変も起きていないという返答を受けて、ガット村の男共々面喰らう事になった。


 (もっと)も、村への途中の道では何かあったと言うのだが……

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