第二百十七章 諜報網構築会議 5.エメンとオッドからの提案~心霊スポット~
眷属会議の掉尾を飾ったのは、エメンとオッドの亡霊出身者二人組であった。本来ならこれにノックスを加えた三人組なのだが、ノックスは「緑の標」修道会の実務が忙しく、念話での参加も無理と言う事で不参加となっている。
ともあれ、そんな二人が提案してきたのは……
『怨霊を偵察戦力に――か』
立場を考えると当然とも言えるが、怨霊を偵察戦力として活用してはどうかというものであった。どうもノックス捜索の際に、行き掛かりで大量の怨霊をリクルートした事が念頭にあったらしい。
『へぇ。手前味噌な話じゃあるんですが、怨霊ってなぁ大抵、魔力の澱んだ場所に囚われていやすから』
――逆に言えば、ゴーストの出没する場所は大抵が、魔力が集まり澱み易いという事だ。これは精霊門を開く上でも重要な条件なのではないか?
『おまけにそんな場所ってなぁ、人間たちもおっかながって近寄らねぇですから、精霊門の事を隠すのにも好都合じゃねぇかと』
『逆に、怨霊の事が評判になるという事は、近くをそれなりに人が通っているという事でもあります。噂話を訊き出す機会もあるのではないかと』
『う~む……』
予想外の方面からの想定外の提案に、クロウとしても唸るしか無い。精霊門の適地については頭を痛めていたが、よもやこんな提案が出て来ようとは。
『いや――あっしらにしても確信は無かったんですけどね』
『我ら二人と――ここにはいませんが、ノックスとも意見を交換した結果、そういう事ではないのか――と』
『ま、好い機会だから、一つ言上申し上げようって事で』
『う~む……』
相変わらず唸るしか無いクロウであるが、シャノアに加えてダン・ジョン・マストの三人組も、ついでに精霊樹の爺さまも、驚き呆れて声も出ない様子である。
成る程。立場の違う人材の交流というのは大事なものだ。
怨霊が出るという噂の場所に行き、クロウの魔石か何かで心霊スポットを探して強化してやれば、放って置いても辺りの怨霊が集まって来る。その中で、話の通じそうなのを諜報員としてリクルートしてやればいい。
元々が魔力の集まり易い場所なのであるから、少し強化してやるだけで、精霊門の適地としての条件を満たすだろう。
強化の方法は魔石でも充分だが、ついでにその場所にも植樹してやれば、修道会の活動の結果怨霊が消えたという事になり、修道会の評価も高まるではないか。一石三鳥の大名案にして、或る意味では一番簡単な方策でもある。
『……慰霊碑でも建てる事にすれば、修道会の活動の名目としては充分だな』
上手くすれば魔力循環の回復も狙えるかもしれぬ。……ひょっとしてこれは四鳥目か?
『となると……心霊スポットというやつを探す事になる訳だが……』
話の切っ掛けとなったノックス捜索時の怨霊スポットがまず思い浮かぶが……如何せん、あそこは「緑の標」修道会の活動域から外れている。いきなり遠くへ出向くというのも、修道会の活動としては些か不自然だろう。
『ついでに言いやすと、あの辺りの怨霊は総浚えしたって聞いてやすからね』
『精霊門の適地を探すだけならともかく、修道会の活動をアピールするのには向かないかと』
『修道会の活動に関係無く、怨霊は既にいなくなっちまってる訳ですから』
――となると……
『……自分で言うのも何ですが……あっしが囚われてた場所辺りが手頃じゃねぇかと……』




