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第二百十七章 諜報網構築会議 4.スリーピースからの提案~地下トンネル~

『お前たちか……』



 名告(なの)りを上げたのは「(あわい)の幻郷」のダンジョンマスター見習いにして中二病全開の三精霊、「スリーピース」の面々であった。

 そしてその提案は中二病患者に相応(ふさわ)しく、しかし有望そうなものであった。



『傍受用の地下トンネルを町の下に延ばす……ですか』

『併せて、それを魔力の通路としても活用する……ふぅむ……』



 大胆豪快にして意表を()いた発案に、ペーターやネスといった軍事顧問団も感嘆――もしくは呆れ――の(てい)である。良識派の面々の反応は言うまでもないが、キーンを筆頭にした中二病派は大喜びであった。もうその事だけで不安を感じるクロウであったが、スリーピースの提案が黙殺には惜しいものであるのも事実なのであった。



『オドラントは広大なダンジョンであるにも(かか)わらず』

陛下(マジェスティ)のお力で秘匿は万全だと伺いました』

『そのお力を(もっ)てすれば、充分に成算のある計画だと』



 スリーピースの提案は、要するに伝声管の設置である。それ自体は既にシャルドの秘匿ダンジョンで運用実績があり、そこに駐屯しているイラストリア兵士の噂話を今現在も聴き取っている。コスパが気になるところだが、建造のコストは――クロウの主観では――著しく低い。伝声管の配管の位置を決めるため、事前に町内における家屋の配置を探っておく必要はあるが、逆に言えば、手間と言えそうなものはそれくらいだ。人が通れる規模のトンネルであれば気付きも警戒もされようが、利用するのが精霊なら、ごく狭い割れ目のようなものでも充分だろう。ならば気付かれる事も無いのではないか?



『更に! 陛下(マジェスティ)の配下にある各ダンジョンをトンネルで結べば!』

『テオドラムの地下に一大諜報網を築く事も可能です!』

『あの国の様子など手に取るように判る上、魔力循環の問題も解決できるかと!』

『いや……そこまでのトンネル網を一朝一夕に構築するのは、幾ら俺でも無理だからな』



 〝一朝一夕にでなければ可能なのか〟――とは、もはや誰も突っ込まない。できるにきまっているではないか。



(テオドラムの事はさて()くとして、今は諜報トンネルの実用性だよな……)



 問題は、人員を配置するに足るだけの成果が上がるかどうかだが……



(……仮に諜報拠点としての価値が低くても、魔力や精霊の通路としての役割が期待できる訳か……)



 精霊門の条件となる魔力の通り道だが、植樹以外の方法でも形成できる。地上では魔力は()ぐに散逸してしまうが、それを抑える構造物があれば別である。洞窟や廃墟などがダンジョンになり易いのはこのせいであり、それを考慮するならば、地下トンネルを(もっ)て魔力循環の回復を図るというのは、充分な成算があるように思われた。



『ふむ……アイデアとしては面白いが、どこかで実験しておく必要があるな』



 どこぞに手頃な場所が無いものか――と、思案していたクロウであったが、



(……トンネルと言えば……確か「朽ち果て小屋(ロットン・ハット)」の精霊門の件があったな……)



 イスラファンのベジン村郊外に精霊門を造ったところ、そこを出入りしている精霊が村人に目撃されたらしく、鬼火だの人魂(ひとだま)だのと騒ぎになっているらしい。これは(まず)いと、とりあえずベジン村を()(かい)するような形で精霊門からの地下道を延ばし、その先を藪の中にあった小動物の巣穴――放棄済み――に(つな)げて対処したのだが……



(……傍受用の小トンネルを村の地下に延ばすか? どうせ一度は様子を確認しなくちゃならんのだし……魔力の流れがどうなっているかは、精霊たちに確認させればいいか……?)



 首尾好くいけば諜報拠点と魔力の通路を一気に確保できる。植樹による魔力の回廊(コリドー)と上手く組み合わせれば、選択肢も色々と広がりそうではないか。

 これは気合いを入れて実験すべきだろう。



 発展的な計画が幾つも出てきた事で、大いに気を好くしたクロウであったが……こうなると、他にも何か名案が出て来ないかと、欲を掻きたくなるのが人情である。柳の下に泥鰌(どじょう)はいないとか、学生時代に習った株を守る宋人の逸話ウサギころげたきのねっこだとかが脳裏に浮かぶが、訊いてみるくらいいいではないか。



『あー……他に何か提案のある者はいるか?』



 ――驚いた事に返事があった。



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