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第二百十五章 「緑の標(しるべ)」修道会 5.予定された邂逅(その2)

 思いがけない申し出を受けたノックスは、仮面越しにも(かか)わらず器用に片眉を上げて、不審と不満の意を表する。何の権利があってそんな事を言う?



「……どなた様かのご領地なのですか?」

「いや……そういう訳じゃねぇんだが……ぶっちゃけて言うと危ねぇんだわ」

「は?」

「実はな、この先にゃダンジョンってやつがあるのよ」



 さすがにノックスもこのカミアングアウトには驚いたようだ。



「……ダンジョン……ですと……?」

「おぅ。それもチンケなダンジョンじゃねぇ。『()(ぞう)岩室(いわむろ)』って、年季の入ったダンジョンだ」

「『()(ぞう)岩室(いわむろ)』……」



 ノックスは驚愕の(てい)であるが、驚いている理由は――男が想像しているのとは――少し違う。

 自分の(クロウ)が話してくれたダンジョンが、まさかこんなところにあるのだとは思ってもみなかったためである。


 ノックスの驚きの表情を見て、どうやら本当にダンジョンの事は知らなかったらしいと判断する男。してみると、(くだん)のダンジョンを目指(めざ)していたというのは(かん)()り過ぎだったか?



「……はぁ……事情は解りました。さすがに我々もダンジョンを緑化しようとは思いませんから、温和(おとな)しく戻る事にします」

「おぅ、そうしてくれりゃありがてぇ」



 ()くして、両者は一見円満に別れたのであったが……



・・・・・・・・



『あ……そう言えば、「()(ぞう)岩室(いわむろ)」はフルック村の北になるのか……すまん、忘れていた』



 ノックスからの報告を受けて、これは自分が()(かつ)だったと反省するクロウ。ダンジョンと緑化候補地が頭の中で結び付かなかったのは事実だが、そんな言い訳が通るものでもない。敢えて言うなら、フルック村から「()(ぞう)岩室(いわむろ)」にまで遠征するなどと考えていなかったせいであろうが……



『あ、いえ。そこまで(くだん)のダンジョンに接近した訳ではありません。ネス殿に位置を確認したところ、まだ三日ほどの距離はあったかと』

『何? ……随分手前でインターセプトされたもんだな』

『はい。少々警戒が過ぎるかと』

『それか。お前が怪しいと判断した理由は』



 一見すると冒険者らしい風体(ふうてい)の男であったが、冒険者にしてはその挙動が少し不自然だ……

 そう(かん)()ったノックスがクロウに一報を入れたのであるが、疑いの根拠となったのは、



『言動の端々(はしばし)に、自分を探るような気配が(ほの)()えました。それが第一です』

『第二は何だ?』

『山の方からこちらへ向かって来たにしては、収獲物を持っていませんでした。山で一狩りしてきた後なら、何らかの獲物を携えているのが普通です。なのに、それらしきものを持っていなかったし、つきたての汚れといったものが見られませんでした』

『それが第二か。第三は?』

『自分たちがダンジョン方面へ行くのを止めた、その様子が妙に熱心でした。普通の冒険者には不自然なくらいに』

『ふむ……不自然か……』

『ダンジョンが危険だから近寄るな――というにしては気が早い。まだ三日もかかるほどの距離があるんです。そこまで気を遣う必要が見当たりません』

『第四は?』

『山から戻って来たというなら、そのまま自分たちと同じ方向に戻るのが自然です。なのに自分たちと別れた後、一旦山の方へ戻って行きました。その先にある分岐点から別方向に戻るのだと言って。それが事実なら、何も自分たちの方に向かって来る必然性は無かった筈です。あるとしたら……』

『あるとしたら?』

『最初から自分たちと邂逅するのが目的であった――そういう場合でしょう』

『……つまり?』

『遠距離から自分たちの接近を察知し、その目的を()(ただ)す目的で近付いた。すなわち、それができるくらいの索敵能力を有しており、それを自分たちに向けた――という事になります。一つ一つは弱いかもしれませんが、これだけ揃えばそれなりの根拠になります。……ダンジョンへの接近を常時監視している者がいるという事です』

『ふむ……』



 予想以上に理路整然と根拠を示された以上、クロウもノックスの懸念を受け容れるざるを得ない。



『ふむ……「()(ぞう)岩室(いわむろ)」のダンジョンマスター(モ ン ド)に連絡を取ってみた方が良いかもしれんな』


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 『第五部 復興の精霊回廊 篇 第二百十五章 「緑の標(しるべ)」修道会 3.クロウ(その3)』で >ここは一つリーロットから村の西を通って北上する道を辿ってみよう とありますが、前回・…
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