第二十八章 ヴァザーリ伯爵領 1.死霊術
ヤルタ教およびヴァザーリの連中が、またもやろくでもない行動にでます。
以前に実施した奴隷解放戦以来、ヴァザーリ伯爵領では亜人に対する恐れと反感が募る一方だという。ヤルタ教はその風潮を利用しようとして、ヴァザーリの冒険者を新たな勇者に認定したらしい。当然、その目的は、対決色を強めつつある亜人の討伐だろう。ヴァザーリ伯爵領の北にあるエドラの獣人村が狙われたらしい。ホルンの話とは、エドラの獣人に協力してヴァザーリ伯軍を撃退して欲しいというものだった。
「やめろ。これ以上亜人と人間の対立を煽ってどうする。バレン男爵の時は、エルフが関与している証拠を残さなかったから大事にならなかったんだ。もし、エドラの獣人が正面切ってヴァザーリ伯とやり合ったら、獣人――下手をすると亜人全体――と人間の対立は、今度こそ抜き差しならないものになるぞ」
「……ですが!」
「落ち着け。少し策を練ってみる。くれぐれも早まった真似はするな、させるな。それと……今回は禁忌の術を使うことになるかもしれん。その点は覚悟しておけ」
「禁忌の術……と仰いますと?」
「死霊術……事と次第によってはだがな」
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『ご主人様、いかなる策をお考えでございますか?』
『なに、亜人の領域ばかりで闘っても、ヴァザーリの民の心を折る事はできんからな。戦っていうのがどんなものか、領都の住人にも知ってもらおうと思ってな』
『具体的には……どのような……策ですか?』
クロウはハイファの質問ににやりと――そして黒く――嗤って答えた。
『馬鹿勇者のアンデッドを使ってみようと思う』
『馬鹿勇者の……アンデッドで……相手役が……務まる……でしょうか?』
『難しいだろうな。だから真打ちを用意する』
『真打ち、ですかぁ?』
『ああ、キーンの策を採用する。ドラゴンの骨を使ってな』
第二次ヴァザーリ伯爵領戦のために、久々に自分の戦力を確認した結果がこれ。
【個体名】クロウ 烏丸良志(からすまる・ながゆき)
【種族】??? 唯一無二の存在
異世界からこちらの世界に移動した際の衝撃で、たまたまダンジョンコアと融合した異世界人。融合したダンジョンコアがまだ未熟なものであったため得たスキルは少ないが、その後の度重なる異世界間移動に伴って身体に膨大な歪みを蓄積した結果、常識外の魔力を保有するようになった。ただし、現時点では風魔法以外の魔法スキルを得ていないため、魔力の使用は制限された状態にある。
【地位】ダンジョンの支配者
【レベル】15
【ユニークスキル】「壊れたダンジョン」 レベル11
★自分を起点とした半径三十メートルの範囲内に任意にダンジョンを設置できる。設置できるダンジョンの規模は術者のレベルに依存する。
★自分で設置したダンジョンの内部を瞬時に移動できる。
★自分で設置したダンジョン間にダンジョンゲートを設定する事で、ダンジョン間を自在に移動できる。
★自分で設置したダンジョン内に任意の地点から瞬時に移動できる。
★ダンジョンの内部構造を任意に変更できる。
★ダンジョンコアを生成および育成する事ができる。
★ダンジョン壁と同様の能力をその身に纏う事ができる。
★ダンジョン内外の任意の場所でモンスターを召喚および送還できる。召喚できるモンスターの種類は術者のレベルに依存する。また、召還後にモンスターを強化できる。
★ダンジョン内外でアンデッドを使役できる。同時に使役できるアンデッドの数および活動範囲は術者のレベルに依存する。
★屍体などの素材からアンデッドを自由に作成・強化できる。
★召還したダンジョン壁の材質を任意に変更できる。変更できる範囲は術者のレベルに依存する。
★任意の場所に任意の形でダンジョン壁を召還し、これを操って攻撃に用いる事ができる。召還したダンジョン壁には属性魔力を付与できる。召喚できるダンジョン壁の規模および召喚位置は術者のレベルに依存する。
★支配下に置いたダンジョン内の任意の空間に属性魔力を放出し、攻撃に用いる事ができる。放出できる魔力の強さは術者のレベルに依存する。
【スキル】異言語理解 鑑定 従魔術 眷属強化 念話 風魔法 錬金術
クレヴァスダンジョンの防衛兵器開発の恩恵か、レベルが幾つか上がってたんだよ。特にアンデッド関係でクリエイト・アンデッドの技能が上がっていたため、ドラゴンを使う事を思いついたわけだ。
『まぁ、幾つか試してみてからだがな』
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『そう言えば、ヴァザーリの連中は何で冬も近いこの時期に獣人村を攻めようなんて思ったんだ?』
『獣人たちは冬の間に子育てをするんじゃよ。今ならそろそろ生まれたての赤ん坊もおるし、奴隷用に攫うつもりなんじゃろ。雪が降ったら山へ入るのは無理だしのう』
『つくづく胸糞の悪い連中だな』
もう一話投稿します。




