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第二百十四章 チョコレート・ゲーム 1.ノンヒュームからの提案

 クロウが(ふな)()み島で――クロウ主観では密かに――チョコレートとココアの試作に手を染め、量産の方針を固めてから四日後、



「精霊使い様、何やら新たな甘味をお試しになられていると仄聞(そくぶん)致しましたのですが……?」



 ――秘匿したはずの情報は、あっさりとホルンにバレていた。


 一体どこから漏れたのかと(いぶか)しんだクロウであったが、話を聴いてみれば単純な事であった。精霊たちから漏れたのである。


 (ふな)()み島でチョコレートとココアの試作をした際に、その場にいた精霊たちにも試作品を振る舞ったのであったが……()(かつ)にもクロウはその時に、精霊たちに口止めするのをコロリと忘れていたのである。


 新機軸の甘味のご(しょう)(ばん)(あずか)った精霊たちは大興奮。早速本土へ戻ると、仲間の精霊たちに自慢しまくったのである。

 ()の「偉大なるクロウ」が新たに創造した新機軸の菓子の噂は、それこそ瞬く間にイラストリアの精霊たちの間に広まり、(たま)さかシルヴァの森に帰っていたホルンの耳にも届いた。ホルンはクロウ程に精霊たちの会話を聞き取る事はできないが、それでも噂話の大意を掴み取る事ぐらいは――何しろそこら中の精霊たちが、寄ると触るとその話で持ちきりな事もあって――できたのであった。

 これは聞き流してはおけぬとばかりに、ホルンは魔導通信機で連絡会議の本部に一報を入れた。そして、その話を聞かされたノンヒュームの甘味チームがどうしたかと言うと……



「そいつら正気か? 自分で自分の首を絞める事になりかねんぞ?」



 チョコレートの試作に一枚噛ませてほしいと、ホルンを通じてクロウに願い出たのであった。



「元凶となった俺が言うのも何だが……ノンヒュームの連中は、砂糖漬けやら駄菓子やらの手配で大忙しなんだろうが。ここでチョコレートとココアの投入なんかやらかしてみろ。過労死する者が続出するぞ?」



 クロウの言葉は決して大袈裟なものではない。実際に五月祭や新年祭での出店では、殺到する客を(さば)くために大車輪を強いられた店員たちが、あわや枕を並べて討ち死にとなりかけたのである。……いや、当人たちは〝枕を並べる〟事さえ許されるのなら、仮令(たとえ)討ち死にしても文句は言わなかったかもしれない。それ程の激戦だったのである。



「あ、いえ……彼らとしてもその点は重々理解しているようです」

「ふむ……?」



 よくよく話を聴いてみると、甘味チームの言い分は――



「……実戦投入は先の事として、とりあえず研究だけは先行しておきたい――か」

「はい。彼らも自分たちなりに砂糖漬けや駄菓子の新作は工夫しているようですが、更なる新機軸の菓子があるとなると、知るだけは知っておきたいというのが彼らの言い分でして」

「成る程な……」



 同じクリエイティブな職に就く者――クロウの本業はラノベ作家――として、クロウにもその気持ちは解らなくもない。

 自分でも、本格的に書くかどうか判らない作品の、設定やプロットを考えたり試作したりしているのだ。〝いざ鎌倉〟となる前に、本当に実戦投入できるのかどうかを検討しておくべきというのは、クロウでなくともこれは当たり前の話であった。


 ――それに加えて、このところ人間どもの動きが怪しいという事がある。


 イラストリア上層部から一応の事情は説明されたが、それをまるっと鵜呑みにする訳にはいかない。こちらでも裏を取る必要があるが、現状でその裏取りが難しいのも残念な事実。なら、当面は警戒を怠るべきでない。そして人間が何を望んでいるのかが判らない以上、切れる手札は増やしておきたい。


 加えて言うなら、酒チームは蒸溜酒という手札を得つつあるが、甘味チームは手持ち無沙汰を喫している。何か酒チームの後塵を拝しつつあるようで、どうも落ち着かないというのもある。


 成る程――と(うなず)いたクロウであるが、一つ確認しておきたい事があった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] また同じパターンを繰り返すん…?
[一言] 情報は漏れるのですよね。。。
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