FILE-9『戦慄の咆哮(後編)』
「……痛いです、マスター」
「我慢しろルナ、しかし驚いたな」
まさか、上級レベルの魔法を扱うとはな……威力だけは。
「とりあえず、上級レベルの魔法を使えるって事は中級レベルの魔法なら耐えてくれるよなぁ?」
「マスター、顔がゲスくなってますよ……」
俺は顔を振って元の顔に戻しておく。
「よし、とりあえず青のカード『アクアスラッシュ』を使うか」
「あれ?手加減するのですか?」
「なんか、殺すのもったいないかな〜って思ってきてな、それに、あっちの国にも渡したく無くなってきたかな……」
「……好きにしてください」
さて、さっきは先手をとられたからズルい手を使うか。
「ルナ、ターゲットの横にテレポートしてくれ」
「わかりました」
俺とルナは男の子のま横にテレポートして一気に近づく。
「なっ!生きてたのか!星狼の咆こ-」
「アクアスラッシュ」
テレポートする前にリフルにセットしていたアクアスラッシュを発動させる。
魔法陣が浮き出ると同時に水の刃が男の子の体を切る。
「ちっ!魔壁を張っているのか!」
「星狼の咆哮!」
「class1に同じ手が通じると思いますか?」
ルナはコインを1枚取りだしてセットして、男の子の前に出てきた魔法陣に標準を合わせて撃つと、魔法陣をかき消す。
「なっ!」
「さて、抵抗は終わりだ」
リフルに白色のカード『ホーリーボール』をセットして、発動させる。
俺の目の前に光の玉が形成される。
俺は光の玉を掴んで男の子魔壁を貫通して、男の子を殴り飛ばす。
ホーリーボールは、下級魔法で空中に光の玉を形成して近くの光属性の弱い敵に友好的だ。
本来は投げて使うが、今回は近くに敵がいるので掴んで殴ってみたが今後もこんなふうに使ってみるか。
相手の驚く反応が楽しいから。
「くそ……、痛てぇ……」
「おいおい、打たれ弱いのかよ」
男の子は立とうと頑張るが腰に力が入っていない。
1回顔を殴っただけなのに、魔力を少々込めてな。
「さて、そろそろ捕獲に移ろうか」
そう言えば、捕獲なんてしたこと無かったな、いっつも殺害で処理してたから。
「ルナ、捕獲の道具」
「マスター、捕獲の道具なんてありませんよ?とりあえず気絶させてくれればテレポートでつれて帰ればいいので」
「……なるほど、それじゃあ気絶させるか」
「くそっ!捕まってたまるかよ!」
「そう抵抗するな、力を抜いてくれれば後の人生楽になるぜ」
「……『レールガン』」
「…………えっ?」
男の子の後ろにいた女の子の前に馬鹿でかい魔法陣が三つ重なって形成される。
「ちょ、レールガンだとっ!」
レールガンって雷魔法の上級だったはず、その威力は見たことないがこの距離だったら……。
三つの魔法陣から一筋の雷が俺の横を通過していって、その後大きな豪風で俺は吹きとばされて土の壁に思いっきり叩きつけられた。
まともに当たってたら、激痛じゃ済まされなかっただろうな。
「がはっ!つぅ〜……」
俺の魔璧が貫通された上に壁に叩き付けられるって高威力だな。
「ますます、レールガンを使いたくなったな、帰ったら新型を買おうかな」
「大丈夫でしたか?マスター」
「あれ?お前無傷なのか?」
「テレポートして回避しました」
こいつって、俺を助けずに1人だけで逃げてたのか。
かなり近くにいたから助けれたよな。
「お前まじ最高」
「ありがとうございます」
「……褒めてねぇよ」
「……私のレールガンが効かない…、どうして?」
「当たらなかったからかな?」
「…………レールガン!」
女の子はまたレールガンを使うが俺に同じ手は通用しない。
女の子のレールガンは俺の前に張ってた魔璧に直撃するがすぐに消滅する。
俺の魔璧は無傷だ。
今度はほんの少しだけ強くしたからな。
「さて、そろそろお遊びは終了だぜ?」
俺は足に魔力を込めて、近くの少年の腹を思いっきり蹴って気絶させる。
女の子は脅してつれていこうかな。
俺は気絶した少年の短剣を手に持ち、少年の首につける。
「さて、今から抵抗せずに来ればこいつを殺さんでやろう」
「うわ〜……、マスターゲスいですよ(小声)」
「分かりました……、ついていきます」
少女は、すぐに抵抗をやめ、こっちにくる。
「さて、ルナテレポートの用意をしろ」
「何処に行きますか?」
「アジトの裏だな」
「なるほど、分かりました」
俺とルナはターゲットを捕獲してアジトに帰ることにした。
〜〜〜〜〜
「いや〜、すみませんコルダさんターゲットの方を殺してしまった」
現在、嘘の依頼完了の報告中。
「そうか、でも何か得られましたかな?」
「ん?あぁ、髪の毛で充分かな?」
俺は懐から髪の毛の入った透明な袋をコルダに渡す。
「うむ、少しの細胞さえあれば良い、それでは報酬を渡そう」
コルダさんは二つに分けられていた袋を二つとも俺に渡す。
「おっ?全部くれるのか?」
「今後テリアスト国との友好関係を築いておきたくは無いか?」
なるほど、今後このような依頼を頼むからという事か、もしくは捕獲したら報酬金はそのままだが、殺害してしまったら半分の報酬金で良いことを知らないのかな?でも、俺は教えないよ?
「……ふむ、そうだな、遠慮なく貰おう」
俺は報酬金の入った袋をシズハに渡す。
「とりあえず、保管しておくね」
シズハは袋を金庫の中に入れる。
「さて、ケント殿、今後は捕獲したのに殺害したなんて、ご冗談をつかないでくれるとこちらとしてはありがたい」
「まじか、いつから分かってた?」
「これでも私は『千里眼』を使えるのでアジトの裏にテレポートした所から見てた」
家に帰って来てからバレたのか。
「なるほど、今後は帰る前に魔法妨害のカードでも使うか……」
「それでは、私はテリアスト国に帰還する」
俺はカバンからルナの首元を掴んで取り出す。
ルナはぷら〜んぷら〜んと横に揺れている。
「せっかくだから送っていこうか?」
「いや、結構だ、少し観光して帰る予定だからな」
「なるほどね」
コルダは髪の毛の入った袋を腰に付けてた袋に入れて帰って行った。
「さて、シズハ〜、夕飯できて……-」
「ねぇ、ケント『捕獲したのに殺害したご冗談をつかないでくれるとありがたい』ってどういう意味かな?」
「ん?あぁ、ちょっとついて来い」
俺はシズハをつれてアジトの裏の倉庫の前に立つ。
「ほれ、開けて良いぞ、誕生日プレゼントだ」
「私の誕生日は半年後なんだけど……、とりあえず開けますか」
シズハは倉庫の扉を開けると、そこには今回のターゲットだった、星狼の獣人の少女とオマケの少年がいた。
「……これがプレゼント?」
「おぅ、嬉しいだろ?」
「……私は良いけど、ケントが…」
「大丈夫だ、心配すんなって……、貯金は沢山あるはずだろ?」
「ケントのお小遣いが減るよ?」
「…………」
さて、とりあえずオマケの方だけでも処理しておくかな。
「冗談だけど、どうするの?怒られるよ?」
「……とりあえず、2人とも家の中に入れ」
〜〜〜〜〜
「なぁ、お前、俺達を捕獲しに来たんじゃ無いのか?」
「いや、お前だけでも差し出しても良かったんだよ?」
俺が生かす理由は少女のレールガンの威力があればこの子だけでもclass3にいける可能性があるからだ。
でも、こいつはclass5で止まるだろうな。
「まぁいいや、とりあえずお前ら名前は?」
「「…………」」
「うわぁ、無いのかよ」
「悪ぃかよ!名前が無かったらよ!」
「いや、名前考えるのだるいなぁって思ってて……」
「それなら、私が決めようか?」
名乗り出たのはシズハだ。
「確かにお前は名前をつけるの早いからな、しっくりくるし微妙に……」
「女の子の方はベへマロで、男の子の方がゴリンマルってどう?」
「……お前に期待した、俺が馬鹿だったよ」
シズハのネーミングセンスの無さにかなり呆れたよ。
とりあえず、余り思いつかないがこれにするか。
「女の子の方はリアナで、男の方はエストで良いな?」
「シズハって人の出した名前よりはマシだな」
「……うん」
二人してそんなに人から貰おうとしてた名前を、拒否するとは凄い嫌だったのだろう。
「ひどいっ!私だって頑張ったのに……」
「いや、俺から見てもあまりにも酷かった」
ベへマロとゴリンマルって名前はな……。
「とりあえず、シズハ夕飯の用意をしてくれ」
「今日ケントの夕飯はパンとスープね」
俺の前にパンとスープが置かれる。
エスト、リアナの前にはステーキとパンが。
「おい……、何でエストの方がステーキで俺がパンとスープなんだよ」
「嫌なら夕飯抜きってどうかな?」
「……有難く頂こう」
俺は冷えたパンを頬張りながら温かいスープと一緒に食べる行動を繰り返す。
「む?お前ら食べないのか?美味しいぞ?」
「いや、肉って食べた事ないから……」
草食系男子ってこの事を言うのか……。
「そうなのか、とりあえず食べやすいように切ってやろう」
俺はナイフとフォークを器用に使って、ステーキ肉を1口サイズに切って、ステーキ肉を何枚かパンに挟む。
「これで、食べれるはずだ」
「……ありがとう(小声)」
俺の方をリアナがじーっと見つめてくる。
「はぁ、しょうがないな」
俺はリアナのステーキも、エストと同じように切り分けて、パンに挟んで渡す。
「ほれ、美味しいぞ」
「うん、ありがとう!」
リアナはまともに返事が出来るのに、エストはまともにありがとうも言えないのか(聞こえていない)。
「美味いっ!なんだこれ!かなり美味しいよ!」
「そうだろ、そうだろ」
なんせ、ステーキ肉だけは王宮に出しても良いレベルの肉を揃えているから、かなり柔らかいはずだ。
他の食材は知らないけど。
「……お前は食べないのか?」
「すまんが、腹いっぱいだ」
スープとパンの食いすぎでな。
「マスター、そろそろ私は眠いです」
ルナが俺の服の袖を引っ張って寝室に行くように促して来る。
「そうか、カバンの中で寝てろ」
ルナはしょんぼりとした顔でカバンの中に入って睡眠をとりはじめる。
「さて、リアナはシズハと一緒にお風呂入ってくれよ?エストは仕方が無いが俺と一緒だな」
「ん?お風呂ってなんだ?」
「お前、まさか知らないのか?」
「当たり前だろ」
「……さっさとこっちに来い」
食事にする前に風呂に入れば良かった。
「さて、服を脱げ」
「はっ!?何を言っているんだお前は!」
「良いから早く脱ぎなさい」
「嫌だ!おま-」
とりあえず、顔を叩いたら素直に服を脱ぎ始めた。
「さて、先に入ってるから脱いだら入って来いよ」
「うぅ、わかったよ」
たくっ、こっちはさっさと疲れてるから寝たいのに、無駄な抵抗ばっかしやがって。
エストが入って来たので椅子に座らせる。
「よし、まずは髪から洗おうか、目を閉じろ」
「……わかったよ」
俺はエストにお湯をかける。
エストの髪の色が黒から白に変わる。
そして、流した水は真っ黒に汚れている。
「……ぬ!?」
「どうしたんだ?そんなに変な声出して」
「お前、黒から白になったんだけども……、髪の毛の色が……」
「あ?そりゃあ星狼一族の髪の毛の色は全員白だからな」
えっと、とりあえず流れ落ちた黒色の液体は汚れって事ですね?
お前は、汚かったのはわかったけど、リアナちゃんは何で綺麗だったんだ?
「よし、エスト、良いって言うまで目を閉じとけよ」
「ん?わかった」
とりあえず、石鹸などでエストの頭を洗い終える。
「よし、体を洗うから目を開けても良いぞ」
「あぁ、ん?なんだその布は」
「これか?これは汚れを取るための布だ、抵抗すんなよ?」
「は?どう意味だ?」
「これから分かるさ……きっと」
〜〜〜〜〜
「よし、洗い終わったから風呂に浸かって良いぞ」
「お前、かなり痛い……」
「いや〜、あまりにも垢が出るもんだから」
かなりエストの体をゴシゴシと強めに、垢がかなりでるようにゴシゴシと洗ったよ。
「でも、風呂って良いもんだな」
「そうだろ?とりあえず今日は明日の為に早く寝ろよ?」
俺は体を洗い終えると先に上がる。
「あれ?お前は入らないのか?」
「先に俺が上がっておかないといけない理由があるからな」
「……ん?」
俺は先に上がってタオルで体を拭いて服を着る。
「あが……なんだ?その布切れは?」
「抵抗するなよ?」
〜〜〜〜〜
「後は服を着てこいよ?女性陣にお前の裸を見せたくないからな」
「くっそ、痛てぇ……」
水気が残らない様にほんの少しだけ強く拭いただけだ。
〜〜〜〜〜
「シズハ風呂上がったから俺は寝るから」
「うん、それは良いけど2人は何処で寝るの?」
「一時期は空き部屋に布団でも敷いて寝させれば良い」
「わかった、おやすみ」
「おぅ、おやすみ」
俺はカバンを持ってカードケースをシズハに渡してから、自分の部屋に行く。
「マスター、明日はどうするのですか?」
「明日考えるから、おやすみ」
「……おやすみなさい」
俺はすぐに就寝をしたが、少しだけ後悔が残った。
空き部屋って確か、かなり掃除してないから埃まみれだったはず。
明日はエストとリアナを風呂に入れるのから始まりそうだな。