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こんばんは。バーサーカーです  作者: インティ
7/9

街に着かないと話が進まないのに

 イルヴァが切っ先をこちらに向け、構える。

 それと同時にイルヴァの纏う雰囲気が変わる。

 空気が緊張する。

 

 魔力を使った身体強化だろう。

 恐らく俺も使えるから何となくわかる。

 記憶だと普通の人間じゃ持ち上げられもしないであろうサイズの岩を投げていたから多分使える。使い方はよくわからないけど。

 ある程度慣熟すると視力や聴力まで操れるようになるらしい。

 もしかするとイルヴァの部下を両断した時に無意識的に身体強化をしていたのだろうか?

 イルヴァは使えるようだし、後で聞いてみれば良いか。


 そう思考している間にも斬りかかられている。

 やはり中々速いが全部避けられる。

 フェイントや読み合いも殆どないような直線的な攻撃。

 評価できるとすれば剣の速度だけであろう。

 剣術なんて学校で多少教わる程度だし人の事言えたものでは無いが。

 精神状態のせいで守りや間の考えが抜け落ちているのだろうか?

 だとすれば自分の力を確認できないから残念だ。

 だが簡単に圧倒して恐怖を植え付けるし、良しとしようか。


 直線的な上段切りをかわして間合いを詰める。

 俺の急接近に対して、後方へ跳んで避けようとするが遅い。

 接近した勢いのままに首を掴んで木に叩きつける。


 剣を落とし、喉元を押さえ膝からうつ伏せに倒れる。

 

 倒れたイルヴァの腰に乗っかり話し掛けた。


 「と、まあ実力差はこんな感じだ。

 俺は隙をついても殺せはしない。逃げようとも必ず追い付く。

 例え寝ていても俺が警戒を解くことはない。

 それに言ったよな?部下達の為に生きると。

 だから、下手な事してみろ、すぐに殺してやるから」


 寝ながら警戒する方法なんて知らないけどね。

 あと言ってなかったが、飯の時から服は着ている。騎士達の物を拝借した。だから人に乗っかっても問題無いよ。


 イルヴァは咳をしながら横目でこちらを見ているだけだ。

 その表情は、その目は畏怖では無かった。

 激情でも無い。

 何の感情か?何なのか?何だ?

 平静を装っているのか?だとすれば何を企んでいる?

 恐らく違う。強いて言うなれば…空虚?

 それといくつか読み取れない感情。


 こいつは危ない。

 どう変化するか予想できない。

 ここで殺すべきか?

 駄目だ。案内役がいなくなる。

 子供の頃、あの冒険者が言っていただろう。リスクを負わなければ何事も得られないって。

 落ち着け、裏切ると決まったわけでは無いんだ。

 どう転ぶかわからない。だがやるしかない。これしか道は無いんだ。



\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/



 俺とイルヴァを乗せて馬車は揺れる。

 目的地は神王国の南端かつこの山から最も近く、ディエーチ連邦共和国との境にある都市、スッド。

 ディエーチ連邦自体は多民族国家で亜人種が多い。その為、神王国の王都から遠いスッドも獣人やドワーフが多い。

 ちなみにエルフは殆ど森から出てこない。希にはぐれエルフやハーフエルフなら見かける事ができるらしいが。

 俺が山賊行為をしていたのは主に神王国なのでディエーチ連邦に行くのもありだったが、イルヴァが普通に捕まるので神王国内に留まる事にした。


 最も近いと言えど、スッドまで二日かかる。

 初日の夜は馬を止め、火を焚き、飯を食べた。狩ってきた残りだ。激安干し肉より美味しい。

 冗談でイルヴァに昼みたいに犬食いをお願いしたら、物凄い微妙そうな顔をした。どういう感情?

 それと聞き損ねていたので俺が身体強化を使っていたか聞いてみたが、朝と午後の二回とも使っている気配は無かったとのこと。

 無意識に使って無かったとすれば真面目に俺は身体強化の仕方がわからないわけだ。強敵が表れた時に死ぬ確率が上がったのか。やべえな。まぁいいや、街で聞けば。

 半日馬を御して疲れたであろうイルヴァを先に寝かせる。

 本当に労ってるだけだよ?夜這いをかける為ではないよ?

 既に魔境の山は抜け、山道とは異なる街道らしき道へは出たが、イルヴァ曰くまだBランク程度の魔物は出てくるらしいので就寝時は見張りが必要との事。

 見張りは交代制にした。イルヴァに見張りを任せ、寝るというのは少々危険だが、眠くなるから仕方無い。寝ないと元気出ないんだよ俺。

 静寂と闇に包まれる。焚き火の光に照されるは馬車の一部と僅かな大地のみ。自分の世界がこの二つしか無いように気がして、この二つすら失ってなるものかと心許ない光に薪をくべる。

 孤独感に耐えきれなくなり、そろそろ交代しようかと思っていた矢先、奴は来た。

 ノシノシと重量の伴った足音、荒い鼻息、四つ足の巨躯、焚き火に照され闇に浮かぶ赤毛。一日ぶりの再会。マーダーベアだ。

 同じ固体かなんてわからないが。

 おいイルヴァ、Aランク出てきたぞ。話が違うじゃねーか。

 折檻するぞテメー。



\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/



 吠えた瞬間、口に長剣を叩き込んで一撃で終わった。

 すぐに終わって良かった。長引けば暴れて馬車に被害が出ていたかもしれないし。

 イルヴァに文句の1つでも言ってやろうかと馬車に向かう。

 ガッツリ寝ていた。わりかしバタバタしていたと思うのだがガッツリ寝ている。寝顔を見ているとイラッと来たので胸を掴んで起こす。

 やっぱり勃たない。虚しい。


 「え?あ、ちょ、え?」


 思ったより可愛らしい反応するのね。


 「交代の前に熊仕留めたから手伝って」


 「え、今触って…?」


 「ちょっとムカついて掴んだ」


 「えっと、え?

 夜這いとかでは無いのか?」


 「違うよ。勃たないんだって。

 それより解体手伝ってよ」


 「あ、ああ。手伝おう。」


 熊をばらして、傷みの早い所を焼いておく。

 眠い。焼く作業はイルヴァに任せて寝る。

 脅したとはいえ、やはり不安だ。寝ながら警戒するというのを試してみるか。



\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/



 普通に寝てしまった。さっぱりやり方がわからん。


 だが心配とは裏腹にイルヴァは逃げも歯向かいもしなかった。

 それどころか俺が寝ている間に馬車を進めてくれていた。

 やだ、いい女じゃん。惚れそう。


 「む、起きたのか。

 ちゃんと言い付け通り、傷みの早そうな部位は焼いておいたぞ。そこに包んであるから食べるといい。

 肝とか眼球みたいな換金できる物も積んでおいた」


 やだ、更にいい女じゃん。惚れそう。


 「それと赤毛なんて珍しいな。

 気に入ってな、夜通し剥ぎ取ってしまったよ。

 欲しいのだが…駄目か?」

 

 「マーダーベアの?

 良いよ。色々とやってくれたからね。

 あと、それなりに高く売れるらしいよ」


 「ちょっと待て!マーダーベアなのか!?」


 そう聞かれると自信無くなるな。

 特徴を聞いた事があるだけで、実物を見たことなんて無かったしな。


 「赤毛の熊なんて他に聞いた事ないし、多分そのはず」


 「Aランクの魔物ではないか!

 すごい事だ!なぜ誇らないのだ!?」


 興奮気味に話すイルヴァ。

 Aランクって言っても一番下レベルだけどね。


 「Aランクがすごいってのは知ってるけど

 俺自身気がついたらこんな体だったから、いまいちピンと来ないんだよね」


 「気がついたら、とはどういう事だ?」


 「そういえばそっちの事情聞いただけで、俺の事は言ってなかったか。

 そうだね、簡単に言うと勇者に操られてた」


 「もしかしてたが、その勇者はタカツキとか名乗って無かったか?」


 何かを知っているかのような口調。

 俺の村みたいた所が他にもあったのだろうか?


 「そいつだよ。そいつが俺を狂わせたんだ。

 そいつの何を知っている?

 勇者は代々神王国の管理下にあるはずだよな?

 イルヴァ、お前は勇者の婚約者候補とか言ってたよな?

 神王国はこんな蛮行を擁護しているのか?

 なぁ?」


 話の半ば止まらなくなってしまった。

 

 「ちょっと待て、誤解がある。

 まず勇者の事から説明する必要があるな」


 




今さらですが固有名詞つける才能ないので他言語に頼ってます

イタリア語で

スパーダ 剣

ディエーチ 10

スッド 南

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