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こんばんは。バーサーカーです  作者: インティ
1/9

導入的なね

<奴隷状態から解放されました>


 頭にアナウンスが流れる


「へ?」


 だだっ広い草原に突っ立っていた。


「…どこだ…?」


 呟く。答える者はいない

 片手には一振りの長剣。よくある諸刃で細身、鍔は浅い皿の断面のような形、一つ気になる事は切っ先から柄まで真っ黒だという事だが、そんな事は些細な問題なように感じる

 なぜなら眼前に熊が倒れているからだ。でかいそれはそれはでっかい赤黒い毛並みの熊だ。そんな熊さんの顔面が抉れている

 落ち着こう。現状の整理だ。思考を停止したら駄目なやつだ

 ここはよくわからない草原で、目の前に顔面スクラップの熊さんで、俺の片手にある黒い長剣は鮮血が滴っていると…

 俺か?俺なのか?俺がやったのか?

 いやいやいや、それは無かろう。この赤黒い毛皮、こいつあれだ。昔会った冒険者が言っていたほら、あれ、えーと…思い出した。マーダーベアだ。立ち上がったら六メートル越えるとか言う魔物だ。その冒険者曰く、AランクとはいえAランクの底辺程度の魔物だから大丈夫だろうと高を括っていたら、一撃で大楯を粉砕して楯役の仲間が一人死んだから死に物狂いで逃走したって言ってたっけな

 じゃあ俺じゃ無いな。うん。だって俺農夫の息子だし。十五年間親父の手伝いしかしてこなかったからな。

 というかなんだこの服。くっさ…毛皮だよな?趣味悪すぎだろう。幼馴染みのエマの親父より趣味悪いな。というか毛皮の…鎧か?

 思考を放棄しそうな意識を衣服に移す事でギリギリ保てた

 そして衣服から身体へ意識が向かい、違和感を覚える

 まず目線が高い。記憶ではもっと低かった気がする。これはエマの親父がいつか使うかも知れねーだろと家の外に3年くらい放置していた木箱に乗った時くらいの目線の高さがある気がする

 そして筋肉の発達具合だ。生まれてこのかた十五年間ずっと農作業の手伝いをしていたのだ、それなりに体ができている自信はあったが明らかに農作業だけでつけれる範囲を越えている

色々考えても仕方がない、論より証拠だと現状確認のため呟く


「ステータスオープン」


頭の中に青色の背景に白字のウィンドウ開く



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アマト 17歳 男


Lv 75

職業 バーサーカー


<固有スキル>  戦乙女の祝福 トランス

<スキル>  豪腕 豪脚 物理耐性 魔法耐性 恐慌耐性 直感


武器  重鉄鋼の長剣

防具  獣の皮鎧

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 17歳!?二年もの間一体何をしていたと言うのだろうか。二年の月日が経っているのならこの目線の高さにも頷ける。だがこのこの筋肉量は少し普通では無い気がするがLv 75の衝撃が強すぎてそこら辺は霞んでしまう。あの冒険者はLv 40台で中堅冒険者でLv 70越えた辺りから軍の上位の幹部と並ぶレベルだと言っていた。たった二年でその領域までレベルアップしたのだ。どのくらい異常かがわかる

 そして職業だ。こんな汚ならしい格好をしていたのだ。山賊か何かかと予想していたが違った。バーサーカー?聞きなれない単語だった。

 だが次の瞬間に衝撃が走った。

 ここに至るまでの経緯を思いだしたからだ。一瞬間の内に物凄い量の情報が入ってくる感覚があった。恐らく二年分の情報が一気に来たのだろう。だがそんな考えにふける余裕もなく吐いた。

 盛大に吐いた。

 記憶の大半が戦闘と臓物だったからだ。極めつけは親父とお袋そして幼馴染みのエマの死体だった。四肢が離れて、頭が爆ぜて、腹から折れて臓物を撒き散らして、受け入れ難い記憶がよみがえっていく。混ざりすぎて表現し難い感状が俺を取り巻く

 吐いて吐いて吐き続けて、四つ這いになって入っているものを全て吐きつくしてもまだ胃液を吐いて、涙を流し鼻を垂らし、穴という穴から体液を垂れ流し、胃液すら出なくなっても嗚咽は止まらず、視界の端から黒くなっていき意識を失った

 


\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/



 目が覚めると天井があり、ベッドの上にいた。服も毛皮ではなく布のシャツであり、体も15歳相応の体つきだったらどんなに良かった事か。

 やはり悪い夢でしたとはならないようだ。ゆっくりと瞼を開き、上体を起こす。草原だ。熊の死体が転がってるだけの。正確に言うと遠くの方には山が見える。一切山肌が見えないほど木が生い茂っている山だ

 日が地平線に沈みかけている。夕暮れ時か。正気を取り戻した時が午前なのか午後なのかはわからないが相当寝ていたのだろう。撒き散らした吐瀉物がカラカラに乾燥している。衣服は依然として臭い。いや、吐瀉物にまみれてる分以前より臭い。脱ごう。

 脱ぐために立ち上がると


「グォ…」


 背後から聞こえた。その声は人間のものでは無く獣のものだろう。だが普通の鳴き声ではなかった。驚嘆、戸惑い、焦り、そんな感状が含まれている感じがした。振り返ればやはり獣、赤黒い毛皮が特徴のマーダーベアだった。顔面は抉れてないし、ついさっき死体が転がっているのを確認したから別個体だ。まあ、死体が動いたら恐怖以外の何ものでもないが。そんな眼前のマーダーベアは一歩後退し、少し首を揺らしている。狼狽えているようにも見える。脚に力を込めたかと思えば大きく迂回して森の方へ駆けていった。

 やはり熊は怖い、身構えてしまった。

 そんな絶対的王者であるはずマーダーベアがなぜ迂回したのかわからない。普通に考えるなら俺か目の前の同族の死体食らいに来たのだろう。だが俺は無傷だ。臭いからか襲われなかったのか?そんなわけ無いか。だが熊の死体も無傷のように見える。顔面以外は。

 では食う前だったのかも知れないが、そういうわけでも無さそうだ。

 指が落ちていたのだ。少量の血痕と共に。立ち上がったら瞬間にグリュッっと柔らかい物の中に一本固い芯が入っているような感触が足裏にしたのだ。明らにかじられたような痕がある指だ。考えられる可能性としては誰かが俺の側にいて熊に襲われたという事か、熊が人体を持ってきたかだ。他は俺の頭では思い付かない。

 考えてもわからないものはわからない。

 とにかく体の臭いを流したい。衣服は放棄した。当然だが熊のいる森なのだから長剣は護身用の為捨てるという選択肢はなかった。記憶の整理はそれからだななどと思いながマーダーベアが駆けていった森へ、全裸に長剣といった変質者スタイルで歩いて行った。



\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/



 「ぷはぁ…」


 小池の水面から顔を出し、思いきり息を吸う。空気が全身に染み渡るのを感じる。

 空は闇に包まれ、月だけが辺りを照らしていた。

 川を途中で見つけ、川に沿って歩いてこの小池を見つけたのだ。

 一切手入れをしなかったのであろう長いくすんだ色の金髪を全て後ろへ持っていきオールバックにする。恐らく乾いても髪がごわごわすぎてオールバックの状態で固まるだろう。髪の色は元々こんな感じだったが、サラサラだった。エマによく妬まれるくらいに。

 長剣で短髪にできないかと思ったが刃があまりにもなまくらで切れそうにも無かった。

 水中で体を擦り、臭いを嗅ぐ。臭いは無くなったように感じるが自分の臭いはわからないものだ。本当は臭いのかも知れないがとりあえず良しとしよう。

 小池の淵に置いてある長剣の元へと寄っていき、淵に腰かける。

 さて記憶の整理をしよう

 


 

 

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