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01-001 万乗真也と言う生徒

 

 

今日中に1章全て投下します。

 

 

 県立新羽根(しんはね)高等学校。

 放課後、二年二組の教室には二十一人の生徒が残っていた。


 学校に特に用事のない者――所謂(いわゆる)帰宅部――は、すでに帰宅し、残っているのはこれから部活に勤しむ者、或いは委員会で活動する者など、学校に用事が残っている者だけだ。


 そんな中、自他共に認める帰宅部の万乗(ばんじょう)真也(しんや)は机に向かっていた。


 なぜ帰宅部の彼が放課後の教室に残っているのか?


 答えは簡単、今日の日直だからだ。

 その日の日誌を書き上げ、担任教諭に提出するまでが日直の仕事なのである。


「ああ、やっと書き終わった。後は香津美ちゃんに提出すれば終わり…」


 ちなみに香津美ちゃんとは担任教諭の事である。

 昨年大学を卒業し、一年間の副担任を経て今年から正式に担任となった二十三歳独身の女性だ。

 日誌を書き終え、後は担任教諭に提出すれば終わり…と日誌に向けていた目を上げ、周囲を確認する。


「はぁ…」


 思わず溜息が出た。まだ二十人も教室に残っていたからだ。


「お前ら早く出てけよ、日直の仕事が終わんねーだろ」


 全員が教室を退出するのを見届けるまでが日直の仕事だというのに邪魔な事この上ない。


「何だよ、万乗のくせに」

「偉そうだな、バンのくせに」

「お前ら…」


 男子からは揶揄(からか)ったり小バカにしたようなセリフが飛び――


「何よ、黙って待っていればいいのにわざわざ口に出すなんて器の小さい男ね」

「ごめんね、万乗君。すぐ出て行くから」


 ――女子からは、男子同様小バカにしたセリフの中に一部気を遣ったセリフが混じった。

 これは、このクラスに於ける彼の立ち位置をよく表していた。




 真也は、成績も身体能力も平均的な生徒である。何でもそつなくこなすが、成績は至って平凡。運動も苦手な種目はないが、目立って得意な物もない。


 可も無く不可も無い。

 それが万乗真也という生徒だ。


 従ってスクールカーストも真ん中。虐められる事はないが、特段グループのリーダー的な位置に立つ訳でもない。


 実は、中学まではケンカっ早い事で一部に有名だったのだが、二歳下の義弟が中学に入学し、野球部に入った事で事情が変わってしまった。義弟は甲子園が狙える逸材だったのだ。


 そんなのは自分の知った事ではないと彼は考えていたのだが、義弟の人生を台無しにしてくれるなと両親はおろか親族全員から説教されてしまったため、折れるしかなかった。

 もっとも、それと引き替えに一人暮らしを勝ち取ったので文句は無い。


 別に特別ケンカが好きだった訳ではなかった。勝敗は半々だったし、勝っても負けても痛い思いをした。ただ、あの肌がヒリつくようなスリルを味わえないのが残念ではあった。


 そして高校に入り、ケンカの代わりに彼が求めたのは麻雀だった。

 幼い頃に祖父に教わり夢中になっていた時期もあったが、祖父が亡くなって以来ご無沙汰となっていた。暇が増えた事もあり再び手を出したのだが、今まで気付かなかった麻雀の魅力に気付く事となる。


 確率の中にある、多対一の駆け引き。オーラスでの一発逆転をかけた手作り。ケンカとはまたひと味違ったスリルに惹かれた。放課後は行きつけの雀荘に入り浸るのがお決まりの行動となった。




 要するに、クラスメイトは何も知らないのだ。

 真也がケンカ好きな事も、麻雀に嵌まっている事も。




 彼が自分の事を人に話さなくなったのには原因がある。

 彼は幼い頃に不思議な体験をした事があった。しかし祖父達田舎の年寄り以外に、誰もそれを信じてくれる者はいなかった。体験したと言っても、それを証明する手段がない以上、仕方のない事なのかもしれない。それでも、子供心に傷ついたのは確かだ。それ以来、自分の事を無闇に人に話さなくなった。




 何をやっても平均。居ても居なくても変わらない。それが家でも学校でも、真也に対する評価の全てだった。




 ――ガラッ


「おーい万乗君、日誌まだぁ?」


 そう言って教室のドアを開けて入ってきたのは担任教諭の武田(たけだ)香津美(かつみ)だ。


「後はこいつらが教室を出て行けば終わりだよ」


 身も蓋もない調子で言った。


「あはは、了解。じゃあ栄花さん、一緒に行こうか~」

「はい、香津美先生」


 栄花と呼ばれたのはクラスメイトの一人、栄花(えいか)(うらら)だ。香津美が顧問をしている調理部に所属している。つまり、日誌を受け取ったら一緒に調理室(ぶかつ)に行こうと言っているのだ。


 さすがに教師がいる教室で(たむろ)しているのは落ち着かないのか、教室に残っていたクラスメイト達も、それぞれが部活や委員会に赴こうとした。




 その時、異変が起きた。




 その場にいた全員の視界が白く染まったのだ。

 フラッシュバック。


 次の瞬間。


 新羽根高校二年二組の教室から人の姿が消えた。




 ――――――――




 真っ白だった視界が収まり視力を取り戻した時、真也の目に映ったのは見慣れた教室ではなかった。目に映るのはテレビで見たようなどこかの遺跡。石室と言うべき空間だ。


「うう、何があったんだ…」

「ここ、どこ?」


 同様に視界を取り戻したクラスメイト達の声が、やはり同じ疑問を口にしていた。そこに見知らぬ第三者の声がかかる。


「ようこそいらっしゃいました勇者様方。私の声は聞こえていますか? 言葉は通じておりますか?」


 声をかけて来たのは白髪に白髭を湛えた老人だった。クラスメイト全員がどうしたものかと躊躇していると、香津美が応対した。


「は、初めまして。私は新羽根高校2年2組担任の武田香津美と申します」

「おお、これはご丁寧に痛み入ります。私は神殿所属大司教、フェブラル・ネブラルと申します。以後よしなに」


 その場にいたクラスメイト全員が呆気に取られた顔をした。それも当然だろう。人生の何処でどう転べば大司教なんて肩書きの人物と出会うと言うのか。


「大司教…? あ、あの、ここは何処でしょう? なぜ私達はここに…」

「勇者様、まずは落ち着いて聞いて下さい。ここはアキュエールという世界です。勇者様方のおられた世界とは別の……そう、異世界という事になりますかな」

「い、異世界!?」

「はい。このアキュエールは今、未曾有の危機に瀕しております。この度、その危機から救って頂きたく、勇者様方をお呼びした次第であります」

「未曾有の危機って……」

「テンプレキター!」

「バカ、黙れ!」


 ――バキッ


 漫画やラノベが大好きな佐藤がその場にそぐわないセリフを叫んだが、真面目なクラス副委員長の宇野が殴って黙らせた。




 ――――――――




 大司教の語った話を要約すると、こういう話だった。

 このアキュエールという世界は百年に一度、魔物や魔獣と呼ばれる生き物が一部()暴になる。これを反乱と呼ぶ。中でも二、三百年に一度、より多くの種類の魔物や魔獣が数年に渡って()暴となり、更に暴走する事がある。それを特に大反乱と呼ぶ。


 大反乱は、この世界の人類だけでは手に負えない災厄である。故に異世界から勇者を召喚し、力を貸して貰うのが習わしである。そのために今回も勇者召喚の儀式を行った。

 そして呼ばれたのが――


「私達、ですか……」

「さようです」

「でも私達は一般人で、とてもではないですが魔物と戦う事なんて出来ません」

「そこは心配要りません。勇者様方はこの世界に転移する際に強力な力を得ると言われております。早速、確認してみましょう」


 そう言って大司教が合図をすると、数名が慌ただしく動いた。気が付けば、この場には大司教の他にも何名か人がおり、彼らの様子を伺っている。

 煌びやかな衣装やドレスで着飾った、若い――少年少女と言った方がしっくり来る――者が多く、もしかしたら真也達より年下かもしれない。比率で言えば女の子がやや少ない。その視線は全て興味津々といった感じで真也達に注がれていた。


 そうしている内に準備は終わり、全員のステータス確認が行われた。


「おおおっ! 【光属性魔術】とは、なんと珍しい! 賢者様じゃ、賢者様がおられた!」

「こちらは【マルチアクション】! 魔術戦士になれますな! この世界では珍しい!」

「能力値も素晴らしい! まさに勇者に相応しい才能じゃ!」


 年甲斐もなく興奮する大司教。脳の血管でも切れて倒れるのではないかと心配する程だ。


 そしていよいよ真也の番が来た。


「な、なんと! 【万能】じゃとっ!?」


 大司教のその言葉に、おっ? と真也は反応した。


(おおっ!? 俺の時代キター?)


「なんということじゃ! まさか勇者様方に【万能】持ちが紛れ込んでいるとは!」

「あれ?」


 様子がおかしい。どうも反対に蔑まされているように感じる。


 そして、それは正しかった。







【万能】

 それは、正に万能と呼ぶべきスキル。但し、万能すぎるが故に枷を嵌められたスキル。







 《【万能】:全ての下位スキルを代用可能。但し、このスキルを持つ者は以後成長しない》


 [スキル大全]より引用。







 

一応、主人公以外、21人の性格付けとか設定は出来ています。

出番があるかどうかは…

 

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