2
雨粒がガラス窓に張り付いては落ちていく。
そしてその向こうの景色はビル群、住宅街、田んぼとどんどん変化していく。
そんなものを見ながら電車に揺られて数十分。
電車が止まると俺は本が入った袋を手に提げて駅へ降りた。
周りを見るとついさっきまでいた街の景色とは一変していて、やっぱり田舎なんだなと思い知らされる。
俺の住む町は人口七千人程度の小さな町だ。高校も、ショッピングモールも、本屋さんも、とにかくありとあらゆる施設がない。強いてあるものを上げるとするなら、寂れた喫茶店と陽気なオヤジぐらいなものだ。だからここの町民はわざわざ隣町に行かねばならない。
改札を通り抜けて湿ったコンクリートの待合室を見つめると出入り口付近に一人の少女を見つけた。
稲成高の制服を着た少女。
外の様子をずっと見ているようで、手には傘を持っていない。
あぁ、傘を忘れたのか。間抜けな人間もいるもんだ。今日の降水確率は七十パーセントと高かったのに……
――貸してやるか
唐突にそんな考えが頭の中に沸いた。普段なら絶対他人に恩を売ることは無く、顰蹙ばっかり買っているのだがそのときばかりは何故かそう思った。
歩み寄って、傘先で床を二回叩く。
彼女は振り向いて驚いたようにしている。まぁ、当たり前か。
「あの、良かったらこれ、使ってください」
そういって彼女に傘を差し出してみる。
面識の無い男が少女に傘を手渡す。
一見すると紳士的であり、よくよく考えると変態的な行動に彼女は混乱して石像のように動かない。きっと変態紳士と思われているのだろう。
しばらくして彼女が口を開く。
そしてそれは「ありがとう」でも「変態!通報しますよ」でもないのだった。
「見えるんですか?」
「へ?」
俺は耳を疑った。彼女はさも自分がいないもののように言うのだ。
少し気になったが、とにかく話を進める。
「え、えっと。とにかくこれ。返さなくていいから。」
俺は彼女に傘を押し付けると、降りしきる雨の中に飛び込んだ。
そのまま走り去って、彼女が見えない所まで来ると速度を落とす。
雨が染込んで少し冷たい。でも火照った体には丁度よかった。
俺は壮大な恥ずかしさとちょっとだけの達成感をかみ締めて家に帰った。
小説も練習あるのみ、なんですよね…(しみじみ)
約3年前から黒歴史で黒歴史を洗うようなことをしてきましたが、最初の奴とか見返してみると、この小説より格段につまらなくてびっくりします。
まぁ、逆にそれが成長の証だったりするんですよね。