四話 ディアブロの底
お久しぶりです。夏休みに入ったので更新ペース上げたいです。
「足に車輪が生えるってことは機動力が高そうだな......。さて、どうするか......」
こっちも車輪に変える手はあるが、機動力が同じだとただの追いかけっこになってしまって意味が無い。
剣から一気に間を取る手段も欲しいから............
「足底と踵にスラスター付けたジェットブーツ。一回だけ使った事があるからこれでいくか」
想像。靴が金属質に変わり(どうやら皮膚に密接していれば服等も変形可能らしい)足底と踵にスラスターが追加される。
同時にヴンッという音と共に相手のロボットが起動。車輪の生えた足で急速に接近してきた。
「あっぶねッ!」
踵のスラスターを右にずらしながら左へ旋回。ディアブロが滑空しながらロボットの背後をとり、足底のスラスターで力一杯地面を蹴り、硬化した右上で相手の背中めがけて体を捻る。
「ーー目標、感知シマシタ」
頭を180°回転させたロボットがギリギリで胴体を半回転。
拳が叩き込めず不発に終わると同時に、ロボットが銃身をディアブロの脇腹に叩き込む。
「!?」
何が起こったのか一瞬理解できずに吹き飛ばされる。思いっきり壁に叩きつけられ。ディアブロは地面に突っ伏した。
追い討ちのようにロボットは銃弾の雨を浴びせてくるが、間一髪で、左腕を銃弾から全身を守れる大きさの盾に変える。
腹部の衝撃をいなせずそのまま咳き込んでいると、ノイズがかった声で、天井のスピーカーから、ミラの声が聞こえてきた。
『おいおい、君は戦闘に慣れてなさすぎじゃないのかい?この動乱の世で君は今まで何をしてきたのさ』
「うるっ......せぇよ......」
ぜぇぜぇと息を吐きながら、悪態をつく事しかできない。村内で争いもなく、またほぼ外界から隔離されていたディアブロ達の村では、戦闘方面での教養は軽い訓練しかなかったのだ。
『仕方が無い。君にヒントをあげようか。君が今銃弾を弾いているその盾。君に今、穴が空いてない事からもわかるように、「その物質の硬度」がかなり高い事はまぁ君にもわかるだろう。だから、そんな 盾 な ん て 効 率 の 悪 い 物 にする必要なんて無いじゃないか。』
......なるほど。『盾の硬度=自分の皮膚の硬度』だから、関節が動くように硬化させれば銃弾は当たっても問題ない。
「すまない、助かった」
『礼には及ばないよ。ヒントを与えた分、難易度は上げさせてもらうからね』
「......は?」
『さーて、早く対策しないと君の腕の一本ぐらいは吹き飛ぶよ?まぁ、死なない限りは治してやれるから頑張ってくれたまえ』
「お前何をーーーーー
バチッという音がした。音の発生源、ロボットを振り向く。
真っ白なエネルギーの閃光が、俺の目の前にあった。
盾に変形させた左腕が宙を舞う。
意識が、途切れた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
微睡みから現実に引き戻される。
目を開けると、壁は抉れ、ロボットは金属片に変わっていた。
『やぁやぁ、おめでとう。なんだやればできるじゃないか。全身硬質化、どっちがロボットかわからなくなりかけたけど、能力を応用して吹っ飛んだ腕を繋ぐとは、教えてないのによくやったよ』
腕......?
「そうだ、腕......!」
吹き飛んだはずの左腕は、まるで攻撃なんか受けなかったかのように綺麗に繋がっていた。
気味が、悪かった。
『最大レベルの私の可愛いロボット君を瞬殺したのに、嬉しそうじゃないね。どうかしたのかい?」
初っ端から追い詰められていたあのロボット、しかも最大レベルを、瞬殺......?
そんなこと、能力をろくに把握してない俺ができるわけがないだろう......。
「あれは、俺じゃない......」
『?、何を言ってるかよくわからないが、あの場には正真正銘、君だけしかいなかったが......』
「左腕が飛ばされた時点で、俺は痛みと衝撃で気絶したんだ」
『ほう、ならばあれは、君の本能ってやつだね。まぁここに居ても仕方ない。上に上がってきたまえ。目立った外傷も無さそうだし、上でまた話をしようじゃないか』
ディアブロの目の前に、円形の、人が2~3人乗れるほどの床が降りてくる。
何故か重くて仕方ない身体を動かし、円形の床に乗った。
「(ギアの変形を応用させて、千切れた部位を繋ぎ合わせた上に、自分の体のスケールを超えた変形なんて、規格外の魔力を持ってないと不可能なんだけどな。戦闘を知らない身体に反して、戦闘の深みを知っている本能。底が見えない男だ)」
意味の無いトレーニングは、この医者にとっては意味のあるものだったらしい。
一回世界観とかをまとめておかないとまずい気がしてきました。