二話 ギア
声を出そうと口を開けるが喉の痛みで声が出ない。ぱくぱくと口を動かしていると、俺の状態を理解したのか女性が喋り始めた。
「ああ、すまない。君は一週間目覚めなかったからね、いきなり声を出すには無理があった。まず、私の紹介をしようか」
目の前の女性は胸に右手を添え、凛とした声で告げる。
「私の名はミラ。ミラ・ヴィータだ。先生とかミラとでも呼んでくれたまえ。といってもまだ、君は声を出すことができないだろうけどね」
そこまで言って、女性.....ミラはしばし考える仕草を見せる。だがすぐに考えはまとまったようで、再び話し始めた。
「君を見つけたときの話をしようか。君を見つけたのは一週間前、炎龍の村の中だ」
炎龍の村は、俺が住んでいた村の名前だ。同時に魔王軍と思しき奴等に襲撃された村でもある。
「他に生き残りがいるか気になってそうな顔だけど、残念ながら、君以外に生き残りはいなかったよ」
なんとなくはいた事だが、やはりはっきり言われると、かなり辛いものがあった。
「.....畜.....生.....」
なんとか枯れた声が出るようになってきたが、俺の心は悲しみで溢れていた。
「おや、声が出てきたみたいだね。そのままじゃ少し喋り辛いだろうから、場所を移してお茶でも飲みながら話すとしようか」
茶など飲んでいる心境ではないのだが、ここで話を中断するには聞いてないことが多いので、とりあえず従っておくことにした。
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「あの日、休火山だったはずのあの山がいきなり噴火したが、何があったか聞かせてもらってもいいかい?」
「.........それが、俺もよくわからないんだ。炎龍の村は、生まれもって魔法が使えるわけじゃなく、18になった日に、炎龍のもとへ行って、眷属となる契約を結ぶことで魔法が使えるようになるんだが、一週間前、18になった俺はしきたり通り炎龍と契約を結ぼうとした。だがあんたが言ったようにいきなり山が噴火してな。契約を中断して村へ戻ったんだが、俺が戻ったとき、何人かの男の手で住民は全滅していて、俺と一緒にいた村の衛兵も、俺の目の前で殺されたよ」
「.........山の噴火はおそらくそいつらの魔法的関与だろうね。数人でそこまで大規模な事が行えるってことは、おそらく敵は魔王軍だ。君に一つ聞こう。君は、たとえ君の仇がこの世界を支配している魔王軍だとしても、仇を打とうと思うかい?対抗しようと思うかい?」
「当たり前だ!家族や仲間を殺したあいつらは絶対に許せない!.........だが俺も奴等に簡単に殺されかけたんだ。対抗できる力が無いのにどうすればいいんだ.....?」
「その点は全く問題ないよ。君はもう魔王軍に対抗できるだけの力を持っている。ねぇ、君は『ギア』って知っているかい?」
「ギア.....?いや、聞いたことないな」
「ギアっていうのは、近年色々なところで見つかっている、『一人につき一つしか無いはずの属性固有能力に、もう一つ属性固有能力を追加する』というものなんだ。魔法属性は火、水、風、雷、大地、光、闇があるが、私はその中でも大地、『細胞の増殖を無尽蔵に行うことができ、なおかつそれらに鉱物、鉄などの特徴を、痛覚を消した状態で付与させることができ、細胞に鉱物の特徴を付与させた状態であれば体の形状変化も可能』というギアを持っていてね___
___君の治療もかねて、このギアを君に埋め込んでいるんだ」
前回からかなり時間が経ってしまいすいません。
以前掲載していたサイトの二話とは、大幅に話が変わっております。
話の筋は同じですけどね。