SS「ブラック忍者伝説」
――ワンルームのアパート
男「はぁー…やる気でない。新しいゲームを買っても積みゲーになってしまう…」
ゴロン
男「年かな…もう30だし…」
ハラリ…
くのいち「ブラック忍者の仕業です!!」
男「なっ!? 壁からくのいちが!?」
くのいち「ホワイト忍者です。やる気がでないのは悪のブラック忍者の仕業です!!」
男「帰ってもらえませんかね……」
くのいち「せっかく新しい本やゲームを買ったのに積んでしまうのも、面倒くさくてTENGAを使わなくなるのも、全部ブラック忍者の仕業です!!」
男「ほっとけよ!!」
くのいち「!! そこだ!!」
カッ!
ハラリ…
???「……よくぞ見破った」
男「また壁から忍者が!?」
ブラック忍者「くのいち、やるではないか」
くのいち「出たな、ブラック忍者!!」
ブラック忍者「ククク… やる気がでないのは、そやつが寝てから夜な夜な『疲れたぁー…』『仕事辞めたい…』と耳元でささやき続けてきたからだ」
男「別の意味でこわっ!!」
くのいち「そういう人とバイトで組むと疲れるよね… もとい、なんという非道な真似を…!」
ブラック忍者「しかし気づいたところで、長年潜在意識に刷り込まれたクズマインド。そう簡単に払拭できるかな…?」
男「ううっ……」
くのいち「くっ…こうなったら……」
ガシッ!
くのいち「運動しよう!!」
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――川の土手
タッタッタッ
くのいち「いいペースよ! その調子!」
男「うっす! まだ息も大丈夫!」
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――スポーツジム
くのいち「バーベルは息を吐きながら持ち上げて!」
男「うおお……!!」
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――鏡の前
ムキムキィッ!!
男「こ……これが……俺……!?」
くのいち「よくがんばったね……そのマッチョボディは、君のがんばりそのものだよ…!」
男「くのいちさん…… 俺、この道をもっと極めたい……!!」
くのいち「うん……!」
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――ボディビル選手権 舞台裏
ムキムキッ!
男「いよいよか……緊張するな……」
くのいち「大丈夫。その仕上がりなら予選突破間違いなし! 優勝だって夢じゃない!!」
男「ここまで来たら、優勝狙うか……!?」
???「フフフ、ソウ上手ク行クカナ?」
ムッキィーン!!
男「お前は……ブラック忍者!!」
ブラック忍者「オヒサシブゥーリ……」
くのいち「おぬしまで鍛えていたとは……!」
ブラック忍者「ユーのガンバリがミーのハートに火をツケタ……」
男(なんで日本語が退化してるんだ……?)
ブラック忍者「一時ハ姑息ナ手段デ陥レヨウトシタ。シカシ今ハ、オ前ト全力デ戦イタイ!!」
男「……!!」
ブラック忍者「戦ッテ…クレルカ……?」
男「………」
ガシッ!
男「……お前のおかげで、俺は新しい世界を見れた…… 正々堂々勝負だ、ブラック忍者!!」
ブラック忍者「オオ……!」
男「二人で伝説の大会にしようぜ……!!」
ブラック忍者「ガッテンショーチ……!!」
司会「それでは只今より、男子65キロ超級の予選を開始いたします」
会場「ウオオオオオオ――――!!」
(ブラック忍者伝説 完)