そして影に染まる
影に染まった千影の行末。
光エンドが読みたい方は前話へ。
千影はただじっと、そこに立っていた。
「景通様・・・・・・」
千早の光が、景通を染めてしまった
いつしか景通は光ではなく、千早自身に焦がれるようになっていたのだろう。
胸の奥が、激しく痛んだ。
・・・分かっていた。
景通が千早に焦がれたように、千影は景通に焦がれていた。
この想いは、報われない。
「―ッ!」
いやだ、いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ!
そんなの許さない。
―小さい子に話すことっていうのは全て暗示の意味合いを持つんだ。幼い頃に体験したことの全てが人格形成に関わるんだよ。
「・・・・・・本当だわ」
千影は口端を吊り上げ笑った。
母の言うことを受け入れて、千早を常に優先させて生きてきた自分。それがこんなところでも表れている。
「そっか・・・・・・」
幸せになった千早。
「今度も姉さんが幸せになる、なんて・・・絶対に許せないよね・・・?」
影の奥で、景通が頷いてくれた気がした。
◆◆◆
「あははははははははははははははははははははははははははッ!!」
壊してやる。全部壊してやる。
―僕の父を、殺してくれないかな。
お安い御用よ!
「どうした、君・・・。―おい、それを離せ!何をする気・・・・・・・・・
ぅあ゛ああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアア!」
あなたの望み通りに。
怯えたように醜く歪む領主の顔を、包丁の柄で容赦なく殴りつける。
何度も、何度も。景通の嫌う、温厚でお人好しな面を跡形もなく潰していく。
こいつのせいで。何年もの間、母の言いなりになり続けなければならなかった。
千早の影で生きなくてはならなくなった。
「―おい、千影!?何してるんだ!!」
その声に振り返ると、そこに居たのは景通だった。
愛しい人。
「光になんて、染めさせない・・・」
もう一度、私が影に染め直してあげる。
勢い良くその刃を彼の胸に突き立てた。
「があッ!!」
続けざまに二度、血を吐く。それは夜の中で闇色に煌いた。
「・・・・・・・ち・・・・・か・・げ・・・・・・」
景通の身体が見る間に血で染まっていく。
―あなたが姉さんを愛するように、私のことも愛してください。
その言葉は、景通に言いたかったものだった。
「兄さん・・・・・・愛しています・・・・・・」
私のことを見てください。私のことを愛してください。
千早ではなく。
その瞬間、彼は確かに、千影のことを見ていた。
景通の身体から力が抜ける。
景通の血、闇色の血。
千影はゆっくりと、景通の闇色に濡れた唇に、
―口づけた。
「―ちい、ちゃん・・・・・・・・・?」
「・・・・・・姉さん」
千早はその場に崩れ落ちた。
「これ・・・一体・・・・・・どういう・・・」
いやいやというように首を振る。
「・・・姉さんは、ずるいです・・・・・・。一生、影を理解することも、知ることすら出来ずに死んでいけるなんて・・・」
自分も、そうであったらよかったのに。
そうであったら、景通が焦がれたのは千影だったかもしれないのに。
気を失った千早の胸に、刃が振り落とされた。
「さようなら、姉さん」
出来ることなら次は、あなたの妹として生まれてきたい。
―私たちは、光だった。
―だけど、私の心には影が生まれた。
そして、私は影へと染まった。景通兄様が導いてくれた。
光の心はもう、私の中にはない。
それなら私は、この影の世界を生きていこう。
姉さんと景通兄様と一緒に。
鬱EDです。我ながら暗い・・・・。
でもこれが一番書きたかったところです。これのためにこの物語を書きました。
これを読んだ後で光EDを読むのはあまりおすすめできません。多分納得がいかないと思うんです。
それだけこのEDは自分のなかでしっくりきていて、当然の結末だと思っています。虐げられた十数年は、そんなに軽いものじゃないはずなので。
ただ、光EDに持っていくために後半の展開を明るめにしているので、流れ的には違和感があるかもしれません。光EDから書いたので仕方ないんですが。もっと早い段階で分岐させるべきだったかもと後悔中です。




