試練1 靴下事件
プルルルル…プルルルル…
地獄のベル…じゃなくて電話はなる……。
まずはシカト。これ基本。
プルルルルプルルルルプルルルル……
ちっ。
おい〜誰もとらねぇのかよ―。ちきしょ―。
仕方なくなくカチャ…っと受話器をあげる。
「はい、お電話ありがとうございます。〇◆■でございます。」
「あ〜もしもし〜?〇◆■会社〜??」
…だからそう名乗っただろ。ここで
『えっ?違います。うちは渡辺ですよ』とか言ってもいいかな?とか思いつつ
「はい、そうです」
と言える自分に自我絶賛。ふぅ。
「あのさぁ、お宅で買った靴下買ったばっかりなのに破れたんだよね〜不良品だぞ。こりゃ。」
「左様でしたか。申し訳ありません。では商品確認の為にレシートナンバーとレジナンバーを教えてください」
「レシート!?んなのねえよ」
ちっ。「では一度確認してお取り換えいたしますので商品持参して頂けますか?」
「あー分かった。今すぐ行くから詫び品用意しとけよ。」
ガチャン…ツーツー
……詫び品、ねぇ……。さてさてサービスコーナーにてお客様を待ちかまえ…じゃなくてお待ちしていると…
片手にカエル色の靴下を握り締めたお客様発見!
すかさず歩みよる。
「靴下の件でお電話頂いたお客様でいらっしゃいますか?」
「おう。出迎えご苦労」
ここは極道っちかよ…。と、おもむろにカウンター上に靴下をぽぃと置いた。
う゛っ!!!!!!!!?こ、これは…!!!とても買ったばかりとは思えない何度も洗濯されたようなくたびれきったヨレヨレの靴下。しかも他の係員がいっせいに振り向く程の悪臭。すでに天然危険物に指定されているようなものである。
げぇぇぇ……
さ、触りたくない!!
がにこやかに対応する。ここで表情を変えてはプロがすたる!
疑問を口にのせる。「お客様、恐れいりますがいつ頃お買い物いただきましたでしょうか?」
「あ?1ヶ月前。」
嘘つくなよ。じゃあ何か?まさか靴下が一足しかなくて毎日毎日それを洗濯して履いてるのかよ!
洗濯機様ご愁傷様でございます。そして毎日ご苦労様…あなたには心底同情申し上げます。。
「金、返してくれりゃあいいから。」
おい!そんな状態にしといて返金しろってか!!
正気ですか。お客様… が、そう言ってる以上応じるしかない…嗚呼悲しきサービス業……恨むよ会長!
「かしこまりました。ご返金させていただきます。少々お待ち下さいませ」
値段を確認し返金する。もちろんお詫び品は忘れたふり。
「おい、詫び…(の品は!と彼がいいたかったのでしょう)」
「こちらは少しですがお使い下さいませ。ご迷惑をお掛けいたしました」
…なんて思うわけねーだろ!とか心で呟きつつ笑顔で詫び品を渡す。ふっ。完璧。二度とくんなアホ!
「あんた、名前は?」
にっこり笑顔で偽名を名乗る。
「斎藤と申します。またなにかありましたらお電話下さいませ。」
「おぅ!わかった。じゃあな!」
なにが気に入ったのかお客様は笑顔で帰っていく。ふぅ。塩まいとかないとね。
後日誰かが電話で『当店には斎藤というものはおりませんが…』
と困っていたと聞いた。くわばらくわばら。
ありがとうございました。またお越しにならないで下さいませ。ふぅ。