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神様の苦悩  作者: CHONCHU
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試練13 語り継がれる伝統1

しばらく短いシリーズで書いていこうと思います。

突然ですが。

うちの店に異動してくる奴が真っ先に教えられるのは基本的システムではない。

ある一人の女性の存在だ。

彼女の名前は“ませ子”という。

従業員か…?

いえいえ、とんでもない。

お客様、だ。

ませ子という名前は従業員がつけたもの。本名は誰も知らないミステリアスな女性だ。

彼女は毎日うちの店に来る。1日三回…多ければ五回程見る。

好きなモノは…

店員と“いらっしゃいませ”

なんだ、そりゃ…とオレが異動してきた時も思った。 だが、言わなければ。今年もそんな時期がやってきた。一年早っ!

と、いうことで読んで下さってる皆様にもご説明を。


彼女は70歳くらい。

化粧は厚い。

どれ位厚いかというと笑うとファンデーションが割れるのだ。シワに沿ってピキピキ…っと聞こえない音をたてて。

目の上はいつも真っ紫で唇は真っ赤。

極めつけは香水。

あれ絶対一瓶かぶってるって!!浴びてる…って言うのか!?


とにかく個性の豊か(?)なお客様だ。

来店すればすぐ分かる。いつもより従業員のいらっしゃいませがだんとつに多い。

それもそのはず。従業員が50メートル離れたところにいてもいらっしゃいませを言わなければダッシュで走り寄って来て(!!)

「いらっしゃいませって言えよ!馬鹿やろぅ!!!!」


といって怒鳴り散らすのだ。ちなみに店員を皆“おばさん”呼ばわり。

男の店員だろうが二十歳の若い子だろうがおかまいなし。当の自分は“ばあさん”だろ!!彼女に怒鳴られない奴は(皆は洗礼と呼んでいる)いやしない。皆平等に怒鳴られ、平等におばさん!と呼ぶ、ある意味公平の強者である。どっかのバカ支店長にでも見習わせてやりたい。

そんな彼女はとても記憶力がいい。従業員全ての顔を覚えてやがる…オレだってまだ覚えきれてないよ



去年の話。

オレは少し離れた店に偵察に出掛けた。もちろん私服で。

自動ドアから一般人のフリをして入るとバッタリませ子と遭遇。

げっ!オイ、一体1日何軒の店に行ってるんだよ!

いつもはここで即座に頭を下げ“いらっしゃいませ”というところ。ふっ、だが残念だったな!生憎ここはオレの働いてる店ではない。スルーして通り過ぎようと合いそうになった目を強引にそらすべく首をねじ曲げる。

ゴキッ!

作戦成功♪

首は後で整骨院にでも行って治すさ。涼しい顔をしておぞましいその場から立ち去ろうと……


「待ちなよ、おばさん!いらっしゃいませって言えよ!!」


Σ!!!ナヌー!?オレここじゃ従業員じゃないんだけど!!駄目?駄目なのか!?しかもおばさんじゃないってば!!ってか作戦めちゃ失敗だし!!

ちらっ…ませ子に目をやるとむっちゃ睨んでる。いやいや、待て、冷静に行こうゼ、オレ。ここで争うのは得策じゃない。オレは苦笑いで


「し、失礼しました。いらっしゃいませ(むしろうちの店には来ないでくれ…)」


とませ子に言った!エラい!

すると彼女は


「最初からそう言えばいいんだよっ!!」


一睨みして去って行った。オレは1人で

あいーんだよ♪って返せばよかったな…とか下らない事を考えつつ、偵察も忘れトボトボと店を後にした。

戦意喪失し、ひとつの情報も持ち帰らなかったオレが怒られたのは言うまでもない。

恐るべし!

ませ子!!


ちきしょー、次は勝つ!!

こうして伝統は守られ、語り告がれていかなければならない。

……………………………………………………………アホか!

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