試練11 不幸の手紙
「おはようございます〜」
言いながら自分の責任つきまっすぐにパソコンに向かう。
え〜っと、昨日の売り上げは…っと、ん?メールがきてる。
なになに…
本文
支店長死ね!!!
うん、うん。たまに同感だよ。
ってなんじゃこりゃぁぁあ!!とりあえずオレじゃなくてよかった―、なんてホッとしてる場合じゃないよ。
宛先は…オレと統括チーフと各役職宛て…と…支店長宛て!?一目散に支店長室に走った。幸いまだ時刻は朝6時過ぎで食品関係者しかいない。支店長室に入り込みパソコンを起動させる。なんだかこれじゃあオレがやましいことしてるみたいだ…。
画面を見るとやっぱりメールがきてる。ギリギリセーフ!えっと、これをクリックして…ん?パスワードを入力してください?げっ!パスワード設定してるし。心配するな、誰も見やしない。いや、オレが見てるか…。にしてもマズすぎる。メールを消去できないじゃないかよ…。うーん、困った。時刻は既に支店長が出勤する時間。仕方ない、引き上げるしかない。あ―憂鬱だ―。これから嵐のような一悶着が起こるんだろう。考えただけで体重5キロは減りそうだ。メタボでもいい!こういう騒ぎだけは止めてくれ…。
トボトボ歩いてると前から噂の支店長。こんな日に限ってなんで早いのさ…。
「おはようございます。」
「おはよう〜いい朝だねぇ」
いい朝!?それっていつの事?まさか今日の事を言ってるわけじゃねぇだろうな…ったくいい朝がこれから涙と怒声に変わるとは知らずいい気なもんだ。ご機嫌全開である。
「そ、そうですね(?)」
思わずどもってしまった…。はぁ…。今日の天気は晴れのち唾ってとこか。自分のデスクに戻り支店長からの怒鳴り電話を待つ。
10分…
20分…
45分…。
もしかして見なかったのか!?いやいや送ったものの見ないうちに間違えて消してしまったか!?
よしよしいい昼に近づいてきたぞ。さわやかな昼だ♪鼻歌も歌いたくなる。
ふんふるふるるるふんふん♪♪
横から声が。
「もしかして今日の料理の歌ですか!?気付きませんでした…意外に音痴ですね」
おっとりめ〜!と思ったがまぁいい今は気分がいいんだ。
おおっと…今日は時間が経つのが早いな。メシに行こう♪
「おばちゃんB定食!」
「芦●さん今日はご機嫌じゃん!彼女でもできた?」
「まぁね♪」軽口を叩きながら定食を受け取ろうとしたその時ブーッブーッブーッブーッブーッ………。
オレの携帯がなる。
「はい、芦●でぇす♪」
「急いで支店長室に来てください。」
???統括チーフからである。
ったく!メシもゆっくり食えやしない!!
ふくらっ面で支店長室に行くと支店長がおかめがが鬼になったような顔をしている。
おい、まさか…アレ、か!!?
当たって欲しくない予想ばかり当たるオレ。
すでに役職者は全員集まって顔を蒼白にしている。因みにオレ達役職者と支店長の間には白い机があり、
支店長(赤)
机(白)
役職者(青)
となっていて下手なオランダ国旗ができてやがる。
支店長が重い口を開く。ほら早く言わないと役職者の心臓が保たないぜ…
「さっきトイレに行った奴はいるか?」
へ??トイレ…?なんだぁ〜びびったぜ。安心したオレとは対照に皆の顔が何故かさらに青くなる。横を見ると統括チーフは口をパクパクさせてる。金魚かよ!なんだよ、なんの話だ?早く言えよ。
「さっきトイレに行ったらこんなものがあった」
支店長が持ち上げたトイレトペーパーをみるとボールペン字で
“支店長きもい”
と書いてある。
Σ!!なんじゃありゃあ!!もうそのペーパー使えないじゃん!!そんな支店長の名前が書いてある薄気味悪いやつなんか。
「心辺りのあるやつはいるか!?いないだろうな!!きもいとかいてあるから若い社員だろうと思う。
それぞれの担当に行って犯人を見つけてこい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
すでに狂犬の目になってやがる。
ビビり呆然としてる役職者は返事さえできない。そりゃあそんな目された日には足も竦むってもんだ。そんな部下に苛ついたのか
「返事はどうした!?返事は!!!」
びちゃびちゃびちゃ!!
嗚呼、唾が降ってきた。折りたたみ傘持ってくればよかった…。
の役職者ははじかれたように
「かしこまりました!!」
キムジョンイル(北朝鮮の総書記)の部下は蟻のようにワサワサ散る。支店長室をでると
「メール…見ました?」
と統括チーフ。
「…見ましたよ。」
「あの様子だとまだメールは見てないみたいですね…」
「…だろうな…」
「同一犯ですかね」
「だろう」
「トイレトペーパー見ました?」
「いや、気付かなかった」
「おれもっともだって思っちゃいましたよ」
「同感だな」
「メール、いつ気付きますかね?」
「時間の問題だろ」
「そうですね」
「……………………。」
「……………………。」
ゾッ…。
さて、犯人を探さないとな〜。支店長は若い奴って言ってたけどきもいって多分カタカナで書くんじゃないの?確か“キモい”か“キモイ”な気がする。意外に犯人は年なのか?面倒くさいな…。手っ取り早くいきますか。
やはり噂好きなパートのおばちゃんを数人話を聞くとなんだかあっさり犯人らしき人が浮かんだ。
容疑者1 食品部
中●(35)
彼は年一回の査定で給料をかなり下げられたばっかりらしい。(いいじゃないか!支店長より給料少なくとも髪は多い)
容疑者2 衣料部
橘●(46)
彼は朝早くトイレからソワソワと出てきたのを見られている。(下痢だったんじゃあねえの?)
なんだか火サスちっくになってしまった。こうすると誰もかもが怪しくなってきた。
と、どうやらオレも容疑者になるらしい。おばちゃんち曰わくイタズラでしそう♪むしろして♪だそうだ…。
トイレだろ〜ってことは男だよな…まさか支店長女子トイレに入った訳じゃねぇだろな。んなことしたら犯人探しの前に警察に突き出してやる!禿ちゃびん!!
あーだこーだ言ってる内に容疑者はかなりの数出てきた。
あのさ、支店長、あんた、恨まれすぎですから!!残念!!ジャラン♪犯人探しより恨んでナイ奴探すほうがはやいですから!!斬●〜!!
マジで容疑者多すぎて絞りこめん!
既にメールを見てイカレてるから
「本部に相談してみたらどうでしょう?」
って親切で提案すれば
「そんな恥をさらすことできるか!!」
ときた。ふん!!
痺れを切らした彼は
「なにやってんだ〜お前ら。普段役に立たないくせに!!たまには役に立て!!!」
カッチーン。
分かったよ。
犯人探し止めようゼ―。やってらんねぇ。
数時間後犯人探しはあっさり終わった。
他でもない支店長の手によって。
あーあ…。
バカ。
犯人は今日も涼しい顔をして働いているに違いない。