第七話 性格がかわいい平民
夕暮れ前のギルド本部前広場。街路灯が淡く光り、人工島の空気は少しひんやりとし始めていた。探索者たちの活気はまだ残っているが、任務を終えた者たちの足取りはどこか落ち着いていた。
来生雅也は、回収した素材を倉庫に運ぶ途中で、佐倉美野里の姿を見つけた。二十一歳、元Cランク探索者で、現在は前線から退き、後方支援や街の人々の保護に回っている。
「雅也さん、今日も無茶してません?」
美野里は心配そうに眉をひそめ、笑顔を浮かべながらも真剣な目で問いかける。彼女の声には優しさと気遣いが混ざり、聞く者の心をほっと和ませる力があった。
雅也は肩をすくめて答える。
「無茶するほど、仕事できない」
美野里は少し首をかしげて、にこっと笑った。
「それ、遠回しに自慢ですよね?」
二人のやり取りは、どこか日常の会話のように軽やかだった。長年戦場で戦った経験を持つ者同士でも、こうしたささやかなやり取りが心の緊張をほぐすのだ。
「まあ、無茶はしないよ。俺は回収員だ。前線で戦う勇者じゃないからな」
美野里は小さく頷き、安堵の息をついた。
「それでも、雅也さんがいると安心するんです。あの聖女さまも、雅也さんがいるから安心して活動できるんじゃないでしょうか」
雅也は言葉に窮した。普段は無表情に仕事をこなしているが、こうして誰かに感謝されることは、思った以上に心地よかった。
「……まあ、そうかもしれないな」
「ふふっ、やっぱり笑った!」
美野里は満面の笑みを浮かべ、手を小さく叩いた。まるで子供のような無邪気さと、同時に人を励ます力を持つ笑顔だった。
二人はしばらく街を歩きながら話した。任務のこと、日常のこと、時には些細な冗談も交えた。美野里の性格は、どこか守ってあげたくなる優しさと、明るさを持っていた。戦場から離れた彼女の存在は、雅也にとって安心できる日常の象徴でもあった。
「雅也さん、たまには笑顔で帰ってくださいね」
美野里の声は、柔らかく、優しく響いた。その言葉に、雅也は軽く頭を下げ、微笑む。
「わかった、気をつける」
夕暮れの街並みは、ほんのり橙色に染まる。人々の喧騒も少しずつ落ち着き、街は夜の準備を始める。
こうして、性格がかわいい平民の温かさに包まれながら、雅也の回収員としての一日は静かに終わりを迎えようとしていた。
だが、この穏やかな日常の背後には、まだ予期せぬ出来事が静かに蠢いていることを、二人は知る由もなかった。




