第五話 蒼輪の盟約
大阪湾に面した人工島、夢洲。地下深く広がるダンジョンの中で、Aランクパーティー「蒼輪の盟約」は、今まさに深層攻略の最中だった。
リーダーの朝霧直哉は、鋭い眼光で周囲を見渡す。二十五歳に満たないが、剣士としての実力は折り紙付きだ。重戦士の岩永剛毅、斥候の葉山一真、回復術師の久遠寺澄花、水属性魔法使いの篠宮雫音――個性豊かなメンバーが、直哉の指揮のもとで連携していた。
「左側の通路、注意。魔力反応が強い」
直哉の指示に、葉山が静かに頷く。斥候の敏捷性を生かし、先行偵察に向かう。だが、予想外の出来事がすぐに訪れた。
突然、岩永が背後から飛来した魔物に押し倒される。重戦士が吹き飛ばされる光景は、ほかのメンバーに大きな衝撃を与えた。
「剛毅!」
久遠寺は即座に回復魔法を放つ。しかし、魔力はすでに限界に近く、完全な回復は間に合わなかった。雫音も水魔法で援護するが、状況は思った以上に厳しい。
その瞬間、ダンジョンの影から、何者かの力が介入した。魔物は一閃で消え、空間の歪みが一瞬で修復される。
「……これ、回収案件になったら面倒だな」
現場に居合わせた来生雅也は、ため息をついた。回収員として、この規模の異常は通常なら一晩かかる案件だ。しかし、彼の目には原因の片鱗が見えていた。
パーティーの面々は状況を理解できず、ただ呆然と立ち尽くす。直哉の剣先がわずかに揺れる。
「何……今の?」
岩永が苦笑を浮かべながら立ち上がる。葉山も斥候としての勘で周囲を見渡すが、異常の痕跡は消えている。
雅也は静かに現場を整理しながら、内心で自分に言い聞かせる。
――隠し続ける力を、少しだけ使うしかない。
深層の闇は、一瞬にして平穏を取り戻した。
蒼輪の盟約のメンバーは、未だに何が起きたのか理解できていない。しかし、雅也の胸中には、予期せぬ力の介入と、それに伴う責任の重さが刻まれていた。
回収員として、そしてかつて異世界で勇者として戦った者として、雅也の一日は静かに、しかし着実に進んでいく。
パーティーたちは無言のまま、次の階層へ向かう準備を始める。
だが、深層に潜む異変は、まだ終わったわけではなかった。




