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第十二話 元Aランクの過去


探索者ギルドの倉庫は、夜の静けさに包まれていた。古い木製の棚には、魔力残留のある素材や、回収された冒険用具が整然と並べられている。来生雅也は、その整理作業を終え、深層での任務報告書に目を通していた。


「……ふう、今日も無事で何よりだ」


小さなため息をつき、雅也は肩の力を抜く。そんなとき、元Aランク冒険者の山波大樹が静かに倉庫に入ってきた。二十三歳の青年は、かつてトップランクの探索者として名を馳せたが、今はギルドの現場回収員として後方支援に回っている。


「来生さん、夜遅くまでお疲れさま」


山波の声は落ち着いており、どこか穏やかさがあった。だが、その背後には、戦場を駆け抜けた者だけが持つ冷静さと経験が滲み出ている。


「山波か……久しぶりだな」


雅也は軽く頷き、報告書を棚に戻す。

「今日は、深層の魔力波動が少し不安定だった。君も知っての通り、最近はそういう現象が増えている」


山波は眉をひそめ、倉庫内を見渡す。

「昔なら、俺たちだけでどうにかできたんだが……今は誰かが調整しないと危険だ」


その言葉には、かつての自負と、現在の現実への諦念が含まれていた。山波は一瞬黙り込み、深く息をつく。


「……あの頃の俺は、無理を重ねてばかりだった」


かつての自分を振り返るように、山波は目を伏せる。戦場で力を振るい、多くの任務を成功させたが、その影で仲間や自分自身を追い詰めていた過去がある。


「でも、今はこうして回収員として支える立場にいる。前線で戦うのもいいが、支えることで救える命もある」


雅也はその言葉を静かに聞き、同意するように頷いた。彼もまた、回収員としての役割を自覚している。隠された力を使うこともあるが、それを公にせず、現場の秩序を守るのが任務だ。


「来生さん……俺たち、力を持つ者の責任って、想像以上に重いんだな」


「そうだな。でも、だからこそ支え合うんだ」


二人は短く頷き合う。言葉は少ないが、共有する経験と理解が、確かな信頼を築いていた。


「さて、俺はそろそろ倉庫の整理を終わらせる。君も休む時は休めよ」


山波は軽く笑みを浮かべ、倉庫の出口へ向かう。雅也は微かに笑い返し、再び報告書に目を落とした。


静かな夜の倉庫で、元Aランク冒険者の過去と、現在の回収員としての責任が交錯する。深層での危険が待つ日常の中、こうした支え合いこそが、街と人々を守る大きな力になっていた。



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