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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

殺人日記(序)

作者: 江ノ島上総
掲載日:2025/12/28

12/25


私は今日、人を殺しました。

最初は興味本位でした。だって分からないし気になってしまう。所謂人間の性というヤツなのだから仕方がない。

誰のせいかと問われれば、きっと私のせいだ。

誰がためかと問われれば、それもきっと私のためだ。

結局の所、人間というのはそういう生き物なのである。


───世のためだ。

───人のためだ。


そんな空想めいた言霊を、当たり前のように吐き捨てる。

意味なんて無いのだと知りながらに、人類は考えを止めない。

私は憎い。

私は人間という種を酷く憎んでいる。

いつからだったか、どうしてだったか。

───判らない。

ずっと答えを探している。


それはそうと───死体はどこに埋めようか。


12/26


友人に言われて気がついたのだけれど、どうやら昨日はクリスマスだったらしい。

忘れていたのは、悔しかったからではない。

共に過ごす恋人がいないから、知らないフリをしていた訳では無い。───だって言うのに、彼は五月蝿かった。耳を塞いでも塞いでも、その煽り口調は止まらなかった。

─────まぁ。だからと言う訳でも無いのだが、

また、書きに来てしまった。


最後に聞いた言葉はなんだっけ。

最後に喋っていた言葉はなんだったけ。

忘れてしまうのも無理は無い。

人間に備わる機能の一つ、失念。

それは、記憶の器に注がれた液が、硬い床に落ちてしまう事。──で、更に床で蒸発してしまえば、何も無かった事になる。

では、そうだな。

訂正しなければいけない。

忘れてしまったというのは、語弊があった。

そもそも私の記憶の器には、そんな液体注がれていないのだ。


12/27


今日は珍しいモノを見た。

里菜ちゃんに、新しい兄弟が出来たので見に行ってみる事にした。

歳は七歳。性別は女。名前は、確かサラかサナのどっちがだったと思う。

可愛らしい容姿をしていた。

自分でも素直に驚いた。初めての経験だったからだ。この種を見て、そんな事を思う日が来るとは考えていなかった。

目はまん丸で、長いまつ毛をしている。

鼻筋はしっかり通っていて、年齢に不釣り合いなくらいに唇は艶かしい。


喋りかけてみたのだけど、その生体反応は悪い。

あぁ、だの。うん、だの。

本当に人間かと疑いを持った。

───興味が湧いてきた。

私の知る人間とは、最も愚かな生態系でありながら、有象無象に罵詈雑言を浴びせる簡単な生物だ。

なのに、コレは違う。

見たコトが無かった。

何となく、鏡なんて見なくても、私の頬が緩んで裂けそうなのが自分でも分かる。


シスターに話を聞いた。

元の親から虐待を受け続け、村では迫害を受け、完全に壊れてしまったのだそうだ。

この時は、新しい発見だと思った。


ヒトはコワレルのだ───


新しい遊具が手に入った気分だった。

折角なので、少しだけ遊んでみることにした。

当人曰く、何も感じない。全てがどうでもいい。だそうなので、心が崩壊していると勝手に結論付けた。

とりあえず、右手の甲の皮を、ハサミで切ってみる事にした。

家庭科用の糸切りばさみしか無かったんで、それで代用する。

やっぱりてんで切れ味が悪い。

───無反応だった。

左手も切ってみた。

次はアイスピックで腹部の中心を刺してみた。

力無く吐血して、少しだけ声が漏れた。


───面白い。


次は耳の中を刺してみた。

また少しだけ声が漏れる。


───興味深い。

だって常人じゃない。いやきっと人間じゃない。


次は何をしようか。

何を思ったのか、私は右手を振りかぶった。


失望した。

アレだけ傷をつけても声を出さなかったモノが、殴ろうとしただけで、泣き叫んで後ずさったのだ。

けれど上手く歩く事は愚か立てないようで、身体を這わせてる逃げようとしている。

この時既に、私の興味は地に落ちていた。

なんともつまらない。

やっぱり、人間は壊れたりしないんじゃないか。


12/28


今日は猫を殺してみた。

何かが違うと思った。

それで、いつもとは違うものが得られると思った。

けれど───なんらいつもと変わらなかった。

血液だって同じ色だったし、声だってちゃんと漏らした。多分痛覚もある。人間より高いのか低いのか、そんな疑問すらどうでも良くなる。

そのくらい、無意味な時間だった。


そう言えば、もうすぐ年が明けるらしい。

新年か。

これから先、何が待っているのだろうか。

兎にも角にも、今年は良い一年だった。思い返すとつまらない事だらけで、退屈な日々だった。──だがそれでいい。それ自体が、人間を人間たらしめている。

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