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高良フェノミナン2nd  作者: カラー
第1章:春の頃、人が来たりて為すことぞ

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9/16

生涯スポーツ

 昨年はインターハイで背泳ぎ3冠となり、先の日本選手権でも姉妹に先着し優勝した種目さえある。公言こそしてないものの、金髪と同じ色のメダルが欲しいと願っていたはずだ。

 それが…。


 暫定的な女子のまとめ役となるからには、水泳が嫌いになったわけではないだろう。捧げるはずだった思いと時間は今後どこに費やされていくのか…。

「結菜は変わらないよ」

 千種はそう言って今は遠くに座る親友を優しく見つめる。

 …この時を境に俺は橋本から結菜へと呼び名を変えた。


 ・・・

 相原コーチの説明は続く。

「改めて学校を通じて、水泳部に所属したい方は届けてください。基本的に競泳のみ行います。泳力に違いがあると思いますので、ある程度グループ分けをして、練習を行っていただくことになります。先ほど依田…北玲先生より話がありました通り、なかよし水泳会とは時間も練習内容も異なる場合が多くなるはずです。ここまでで質問のある方は?」

 一息入れるために相原コーチは質疑応答の時間を設けた。


 室内の人たちは、考えてみたら全員一年生と言うことだろうか?男女の別はあれ、一学年でこれほどの人数が水泳部に所属する高校があるものか?


 一人手を挙げる。

 コーチは頷くと、発言を促した。

「あの…体力作りと言うか…ダイエットとかそういう目的はダメですか?」

 コーチは発言した女の子を安心させるように笑いかけ

「部としては、タイムを目指す方だけに所属していただきたいと思います。…ですが、個人としては水泳は生涯スポーツだと認識しています。健康のため…大いに結構で、むしろ健全かもしれません。もともとそういったコースが既に募集されています。ですから、他の部に所属しながら、健康のためにコースに通う…大歓迎です。ちなみに時間が許す限りマリー・スティーブンスさんも北玲先生も、コースに顔を出してみなさんと話をしたり指導をしたいとおっしゃっていただいています」


 ありきたりだが…きちんと幾度となく検討されたことが分かるコーチの発言だった。昔から水泳は人格形成のひとつだと言っていた。今もその延長線上にあるのだろう。


 女子生徒はありがとうございますと、礼を言って座った。

「その他になければ説明会を終わりにします。部に所属することを既に決めている方で、希望される方は残って橋本結菜さん、早名幸平くんと挨拶していただいて構いません」


 そして、幸平こっちに、とコーチに呼ばれて俺と結菜はみんなの前に立ったのだった。

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