由麻ちゃんの失恋
微妙な姉妹感情と言うものはあるらしい。
学校につくと結菜がその細い眉を潜めていた。
どうした?光太郎となんかあったか?
「別にないけど…五明くんのこと」
なんのことだととぼけるのも白々しいよな。
だから姉からまず聞いてみようか。
五明と美也子が付き合うみたいだな。
「昨日の昼から由麻が落ち着かないんだよね」
なんらかの異変が起こっているらしい。
「単純に失恋じゃないみたい」
単純な話じゃないんだ?
「本音ばかりで話してないから…」
四月当初より打ち解けてきてるとは言え、同居してからまだ半年も経ってないものな。
おまけに俺も2カ月入院してたから、その間の関係性の変化まで把握できていない。
さてどうしたものか。
・・・
探偵役は大概周辺の聞き込みか尾行と相場が決まってる。尾行は…そもそも学校内の上に俺が中途半端に有名なので選択肢から外す。となれば周辺の聞き込みか…。
また美也子や五明のクラスに行かなきゃいけないってことか。
だいぶ気が乗らないけど…。
昼休み。
昨日と同じ道をたどる。もうほんの少し先で見慣れたアッシュグレーの髪。
あれ?どこに行くんだ。
予期せぬ尾行が始まる。どうやら1人のようでプールの方に行くみたいだ。
ストーカーいっちょあがり。
…千種の耳に届きませんように。
昨日と同じプールの死角のスペース。
この場所は昨日だけでなく、ヒメさんと千種の別れの場所にもなったし、正直来たい所でないことに気づく。
おや、先客。
…って五明と美也子?
2mくらいのところで由麻ちゃんは立ち止まり、二人に対峙する。
ここで俺は一つの決断をする。何を話すにしても美也子が主導権を握って話すなら介入する。五明なら見守る。
分かりやすい見た目の責任感があるかないか、だ。
俺自身にとっては美也子を守ることが優先だった。
陰から見守ると…。
「…そんなわけで付き合うよ」
絞り出すように告げる五明。
「昨日から…なの?」
由麻ちゃんは五明に目をくれず美也子に問いかける。
戸惑うように美也子は
「うん…」
と答えた。
アオハル。
「…良かった」
そう由麻ちゃんは言った。
「これからはあんまり遊べないかな」
「そんなことないよ」
いつもより幾分か早口で美也子は否定する。
「五明くん」
何を言われるんだとギクリとする五明。
「あたしの大切な友達だから…ね。あたし以上に大切にしてよ」
そして何回かやり取りをした後で、由麻ちゃんは少し覚束ない足取りで二人を背にした。
ずっと由麻ちゃんが無理をしていると分かる。おそらく二人も。
それでも二人は、由麻ちゃんを追いかけなかった。
由麻ちゃんが俺の近くまできた時、結菜と千種が俺の背後にいたことに気づく。
どうやらやはり3人の話を聞いていたらしい。
由麻ちゃんがその場に来ると、姉を由麻ちゃんは見つめた。
「うまくできたかなあ…」
「立派だったよ…由麻」
妹は姉の胸で泣き出した。
俺は千種に二人が時間を過ごせるような場所に案内するよう頼み、俺は五明たちと話すことにする。由麻ちゃんと五明たちが同じクラスなのが今は恨めしい。
どうしてこうも人の恋は切なさを伴うのか。
五明も美也子も辛そうな顔をしていた。




