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高良フェノミナン2nd  作者: カラー
第6章:戸惑いの季節

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二千年ぶりの再会

 千種は既に怒っていない。

 だが…困惑している。

 光太郎と結菜が仲良く手をつなぎ、姉の美樹が後から微笑ましげについていく…後姿を見送ったあと。


「裁判長は残業か?」

 俺たちの部屋に美也子が残った。愛憎半ばの二人がなんだか気まずそうにいる。

 甘える時は千種に対しても思い切りなのだが、そのエキセントリックな性格が邪魔をして時に派手な憎まれ口を叩くのも美也子ならではだ。千種にしてみればヒメさんがいなくなった今では唯一と言っていい…敵役みたいなものである。


 だからこそ、この変調に戸惑っているのだろう。


 …まあ、俺の出番なのか。

「恋でもしたか?」

 はっとしたように俺を見る美也子。


 え、いきなり図星?

 あの美也子が?


 正直宇宙人を見つけたと言われる方がまた信憑性がありそうだわ。


 あらあら、と千種。

 面白いおもちゃを見つけたようにニマニマする。

 どこかで見た表情に、千紗さんを思い出す。

 まさに親子。


 意外にお節介な面のある千種は早速

「誰?」

 と、ど直球にきり込む。

 美也子だって乙女だぞ。前乙女ならそれくらい気を使え、千種。


「先輩に言われたらお姉さんだって傷つきますよ」

 そこでなぜか千種の肩を持つ美也子。

「そうだ、そうだ」

 と千種。

 なぜ気が合う?


「あたしを美人だと思ってない」

 ずいぶんと傲慢な台詞だが、誰も(俺と千種しかいないが)おかしいとは思わない。地球の引力を誰も疑わないだろ?それと同じくらい美也子の美貌は突出している。


「珍しいやつがいたもんだな」

「由麻ちゃん、由麻ちゃんって…由麻ちゃんばかり」

 橋本家の三女か。確かに橋本家の三姉妹はそれぞれ個性豊かな美人姉妹だけど…普通に美也子の方が美しい。


 だいたいそんな変わり者が身近にいるか?

 ふと思い出す。


 ・・・

「そこの美人とかなりの美人、悪かったな」

 その違いどこよ。かなりって?

「シルバーの」

 あれ?美也子を指差すと

「美人」

 由麻ちゃんを指差すと

「かなりの美人」

 あ、五明ってなんかいろいろずれてるやつなんだ。こいつもめんどくさいリストに載せておこう。


 ・・・

 五明かよ。

「五明」

 呪文のように姓を言うと、美也子は肩をピクリとさせた。


 ビンゴ。


「五明くんって…野球部の…ホームランうつ子」

 いっぱいいるけどな。ほら入学式の時に由麻ちゃんをナンパしようとしていたやつを静めた(沈めたではない)、あいつだ。

 少し考え、ああ…と思い出す千種。


「へえ、そうなの」

 微妙に茶化すように美也子に返事を促す。

「彼のことを思って…」

 いきなり美也子は千種に耳打ちを始めた。


 聞き始めた千種は顔をしかめたり、いきなり赤くなったりした。

 千種が恥ずかしがるとかなにがあるんだ?


「そう…。深刻だわ」

 千種は呟く。


「出てこれるか?トヨ」

 低い声が響く。千種の中のミコさんの自我が表面に現れたようだ。

 俺は少なくても美也子の中にいるはずの…ミコさんの妹のトヨさんの声を直に聞いたことがない。

 千種も同じはずだけど…。


 衒いなくミコさんはトヨさんを呼び出すようだ。


 一体なにが始まろうとしているんだろう。

 かなりの不安感と少しだけ好奇心を抱きながら二人を見つめる。どうやら自我と他我の交代に美也子は慣れていないのだろう。

 10分以上の時を費やしひたすら無言の美也子。


 ようやく目を見開いた美也子からミコさんと同じ…本来の美也子より幾分か低い声で

「声を交わすのはいつ以来かしら?姉さん」


 ほぼ二千年近くの時を経て姉妹の再会が始まった。

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