突然の転校
二人の…一種の決別とも言えるシーンがあっても同級生である。
つまり一限目から同じ教室だ。
泣き止み、それなりに化粧を整えた千種は(昨年のお盆以降薄いが千種は化粧するようになった)、いつもよりだいぶ遅いペースで歩く。
「気まずいよな」
「少し辛いかもしれない」
本音のような、覚悟のような言葉を漏らした。
教室に着くとマロさんとキントキさんがヒメさんを囲んでいる。
どうした?
「千種、ヒメが急に転校するって」
逃げ…ではないだろう。
「どこに…」
千種も輪に加わりやっとそれだけを聞く。
下を向いたままヒメさんは話さなかった。
朝のホームルームのため、玲先生はいつもよりだいぶ早く来た。
そして。
「しばらくおやすみしてごめんなさい。今日からまたお願いします。…突然ですが山門さんがこの度転校することに」
なりましたと先生が告げ、ヒメさんに挨拶を促した。
ヒメさんは立ち上がり
「今日までお世話になりました」
とだけ話すと、先ほどと同じく下を向き席に着いた。
本当に短く、飾ることのない寂しい一言だった。
そして一限目が始まる前に玲先生と共に出ていった。
おそらくは千種のためだけの登校だったのだろう。朝の言葉を信じるなら、恋人を自らの判断で二度と会えない立場に追いやり、自分もまた慣れ親しんだ環境から身を引く…それを告げるためだけに登校したのかと思うと、いくぶんか名残惜しさが正直残った。
千種は静かにそこにいる。
いつもの湖のような佇まいで。
俺は千種の視線を追うのをやめた。
そうして快活だった少女の席は、空いた。
・・·
「早名くんと室賀さん。午後時間ある?」
玲先生から声をかけられたのはお昼。
いつもより寂しい面子での昼飯を食べていた時だった。
授業ありますよ?と返すと
「準備が足りなくてね、今日は受け持ちクラスを全部自習にしたの」
じゃあ大丈夫か。
四限目…つまりこのあとすぐに準備室に行けばいいのだろう。
「千種…なんかあった?」
結菜が問う。
ぎこちなくも千種は笑顔を作り
「幸平の授業態度のことじゃないかなあ」
と答える。
「ほんとにこの人は…」
と結菜は俺を見て
「千種、旦那選びに失敗したんじゃないの?」
ちょ。どういう理屈でそんなことになるんだ。
光太郎に悪口吹き込むぞ。
「そういうとこだよ、幸平くん」
どこかで流行ってるのか、そう口にする結菜。
「光太郎に後で言っておく」
何かの空気を読んだのか、珍しく美樹も加わりようやく俺たちはいつものように話し出した。
それにしても…。
玲先生への説明…どうしようか?




