結菜たちの帰郷
金曜日の夕方、なかよし水泳会の面々が帰郷するらしい。
ならば生徒会長代行の俺が出迎えてあげようではないか。
「ちょっとその前に」
千種は俺を前にしてなにやらぶつぶつ言い出した。
「……したら……噛みちぎるから」
え……。
終わったらしくニコッと笑う。
何をお願いしたんだ?
「一年生の女の子とフラグ立たないようにね」
そういや一年生の女の子たちとは会話したことないな。
にしても、フラグって噛みちぎるものか?
俺のフラグが立たないとおまえが不満になるだろと文句を言うと、千種が一瞬鬼に変わったように見えた。
「幸平の下ネタ嫌い!」
へいへい。
千種は俺の右腕を抱きプールに向かう。
こんなとこ誰かに見られたら…って今さらなのか。
どうやらほぼ同じ時間になかよし水泳会は着いたようだ。橋本結菜だけは本来会の一員から抜けたのだが、マリーさんから参加すべしと助言があり、三姉妹仲良く合宿に出たらしい。やっぱ実力があって、安定したパフォーマンスは姉妹随一なのにな。もったいない気がする。
よっ元気だった?
「元気だった?はあなたでしょ」
お元気です。
「らしい…けどどうしてかしらね。なんかムカつくんですけど」
結菜はそう言って俺に握手を求めた。
そういや何気に結菜と触れ合うの初めてだな。特に千種は怒るわけでもなくニコニコ見ている。結菜が帰ってきて嬉しいらしい。
さすがに親友と自ら言うだけのことはある。
美樹は俺と千種を交互に眺め
「やっぱり二人いないと」
と頷いている。ニコイチみたいに言うの止めて。
みささんが俺に話しかける。
「良かったわね」
「はいはい、ありがとうございます」
…おや、俺以外の俺が返事をしたようだ。
「会長代行だって?」
「あたしは代行妻ですけど」
千種、先輩に逆らうんじゃない。
「どっちの肩もつのよ」
なんでそんな威嚇するんだ。
「久しぶりに嫉妬モード全開の千種ちゃん可愛いーっ」
みささんに抱きしめられてるよ…。
玲先生もお疲れのような表情だ。
「田中くん…」
そのことなんですが。
「先生には来週ご説明します。彼女が戻ってきたら」
千種はそう言って押し留めた。
まあ…それがいいのかもしれない。
その前に…千種自身が彼女となんらかの決着を付けなければならないだろう。
そして。
一年生フラグは全く立たないまま解散とあいなった。
せめて一年生に紹介くらいしてくれ。
「あら。気が付かなかったわ」
だんだん千種が強くなってる。
喜ばしい…ことなのか?




