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高良フェノミナン2nd  作者: カラー
第4章:退院後の日々

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契約

 気になる点は他にもあった。

 出頭要請は俺たちをかなり深刻に動揺させたけど…冷静になって俯瞰すると。


 あまりに拙速、杜撰であった。


 なぜ証拠になるものをご丁寧に配達証明までして残したのか?

 人権侵害になりそうなことはリテラシーの高い現代なら早々に分かることであろうに。


 事実、補選に亡くなった陣営からは立候補断念のニュースが流れたばかりだ。

 姉からは今の市長も次は危ういだろうねと聞いている。


 痛手ばかりだ。

 なのに千種を欲しがる動きはまだあって。

 見えていないだけで原動力は身近なのか?


 ………。

 そうか。

 あの矢継ぎ早の動きは一人だけで描かれた思い付きか。

 そんな欲望に振り回されて…鈴木は親を殺め、俺たちは…もしかしたら千種を残して俺だけが事故に遭うようなことに。

 なったと言うことか。


 くそったれ。


 ・・・

 初めて人を殴りたいと思った。

 あの千種が、俺の形相におろおろしている。


「どうしたの、幸平」

 柔らかく包み込む千種の腕。


 すまん。かなり頭に血が登ってる。

 このまま教室に戻ったらなにをしでかすか俺自身が分からない。


「ごめんよ、幸平くん」

 突然声がした。


 かろうじて少ない自制が効いていたのは、この人の存在が頭に入っていたからだ。


 山門飛梅。

 千種は驚いて幼馴染を見る。


「千種でも気づかないはずだったんだけどね」


 …つまり承知の上だと?

 なぜ…見過ごした?


「証拠はないんだよ」

 何言ってんだ、殺意あるだろうが。


「よくて、教唆、だね」

 なぜ婚約者が他人の女に固執するのを黙認するんだ?

 地域をこんな風にめちゃくちゃにして。


「それはあなたたちも同じっしょ」

 義憤でないのは確かにそうだが、それでも。


「千種…ごめんなさい」

 ヒメさんはそうやって頭を最大限下げた。


 千種はまだ今回の構図が描けないのか戸惑っている。

「黙って横暴を許したのはうちの判断ミス。だけどね、もう許さないから」


 どういうことだ?

「彼をうちが面倒みるよ」


 どこにそんな保証が?

「うちと千種の歴史に免じて」


 千種をこれ以上悲しませないってことだな?

「もし破ったら好きにしていいよ。幸平くんに抱かれたっていい」


 あんたにも最低限のプライドあるだろ?

「だからさ。一生幸平くんの女になるって」


 願い下げだ。

「千種大好きだもんね」


 約束でいいよな?

「うん。証人は千種」


 ・・・

「ねえ…。今のって愛人契約?」

 まだ飲み込めていない千種は勘違いしている。


 たぶん山門飛梅はできる限りの譲歩をした。

 現在を壊すことなく。

 あんなことを言いたくもないだろうに。


 田中秀吉と山門飛梅は、千種の誠実さに救われたってことだ。


 どういうことだろう、とまだいろいろ考えている俺の嫁がいつになく愛おしい。


 本当に千種一人で手一杯なんだよ。


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