退院へ
事故からほぼ一月。
ゴールデンウィークも過ぎてリハビリが始まった。
主に左腕の骨折、強く打った頭の状況を小島先生が診断して、まあ大丈夫でしょうと大前先生に引き継いだわけだ。
「回復力が通常の倍みたいなスピードだな。なんかの加護でもあんのか」
大前先生…呼びにくいから監督…はそう驚いているけど、まさか千種の力でも作用してるんだろうか。
…まさかね。
リハビリの途中で新チームの現状を聞く。
「投手はまあ、大杉が軸だろうな。やつは成長期が終わってねえから、あと二年はじっくりやらせる。投打とも依田日向以上の化け物だ」
そんなに?
「とんでもねえものをおまえは連れてきたよ。おかげで真剣に育てねえと俺はプロ野球界の笑いもんだ」
「主戦は夏は市川にするがあいつはメンタルがな。一条と交互に使うつもりだ。去年の沢村、東原みたいにな」
川上は?
「ここぞって時に使う。おまえが戻るまでは一応切り札だ」
打つ方はどうです?
「機動力はおまえ一枚いないのが痛いけどな。黄田と後藤、ロゼ太郎でなんとかなるだろ。なんせ長いのはロゼ、ブート、五明が確実性もある。確率は落ちるが大杉、市川…田所に山形の宝くじもある。確実性は沢村と後藤、あと黄田か。菅と児島は守備がかなりいいからな、着実に成長すれば一年だけでオールジャパンになれる」
そんなにですか?
「とんでもない逸材揃いだ。嫌でも全国制覇を意識しなきゃならないぜ」
まだローカルスターですらないのに。
「少なくても県内じゃもうダークホースどころじゃない扱いだ。練習試合の申し込みがわんさか来だしてる」
びっくりです。
「最後のピースはおまえだ」
・・・
千種はと言うと。
ほんとにヒメさんと看護と言うか、見張り(とっても納得がいかない)を交互にしだした。
なんでやねん。
つまり学校に戻り始めた。
なんだかんだ千種は俺に甘い面があり、それがヒメさんだと容赦なく制限されるものだから、どうしたって緊張する。
「それがね、いいんだよっ」
そんなものかしらねえ。
千種はなかよし水泳会のマネも愛理さんと共同で行うと言う。俺ばかりにかまけているわけにはいかないだろう。
もしかしたら日本水泳界の将来を担っている存在なのだ…なのか?
「あたしは水泳で身をたてたいわけじゃないしね」
ヒメさんも実は玲先生の地獄のメニューで、県内トップに近い存在になりつつある。
そんな人たちの協力を得て、いよいよ六月下旬、退院の日取りが決まった。
この章の最終話です。




