ヒロインは最後に現れるもの
次の日和田さん夫妻がやって来た。
落ち着いた頃を見計らって、千種がこの日に入れた。
有能なマネージャーだ。
誠心さんは相変わらず落ち着いた雰囲気で、華さんは優しげにいた。
「先輩」
美也子も来たのか。
こうやって見るとあたかも以前から家族のような…新しく歩みを始めたばかりとは思えない、関係だ。
「幸平くん、学校はどうするの」
華さんから質問されたそれは、以前に姉が企図した離れ業…退学から通信制への編入、住所を和田さん宅に移す…のことだ。
初めて姉の提案に対してNOと言った。
こんなことになって説得力の欠片もないけど、それでも千種は俺が守りたいし、まわりの人たちも好きだ。
姉は意外なことに、俺の気持ちを受け止め、その分いろんなことに感謝するよう釘を差し慌ただしい日常に戻っていった。
ただ姉の提案には美也子も含まれ…美也子を養子にすることは進行していると言う。
外から来た俺にはよく分からないけど、六条の直系がいなくなるのは、高良にとって痛手なのかどうか。おかしな欲望を呼び寄せないためには現実的に、美也子を守る人が一人でもいる方がいいと思う。
和田さん夫妻たちが退室して、しばらく経ち。
千種に聞かねばなるまい。
「千紗さんの姓になるのか?」
「うん。そのつもり」
室賀…。
なんかいかつい響きである。
室賀千種ね。なんか美人を連想させるな。
「どんな登場人物かしらね」
目の前の千種は、やはり千種で…。
「室賀幸平よ。どう?」
いやもう。羽田、和田、早名ときて室賀、か。なんかどうでもよくなってくる。
「遊佐は?」
正直義兄と同じは、気が重い。
「ほんとに有名人だものね」
美也子が追いついちまったけどな。
「あたしはともかく、あなただって」
んなわけあるか。
それ以降も橋本三姉妹、野球部、水泳部などと来訪が相次ぎ、ちょっとしたお詣りみたいに俺はベッドに鎮座していた。
野球部で一緒に来た折井若葉に対してだけ、千種が丁寧に接したことが印象に残っている。
・・・
おかしい。
「どうしたの?」
ヒロインが足りない。
「頭どうしたの?」
失礼だな。
「また新しい女の子がほしいの?」
そう言うわけじゃないが…だいたいこういう節目で誰か現れるだろ?
じっと考えている千種。
「さすがにもういらないんじゃ」
いらなくても増えるんだよ。
「やほ。幸平くん、元気ー?」
予感は当たる。つーか…。
千種は静かに緊張状態になった。
遊佐晴、現れる。




