日下部愛と佐藤美亜の見舞い
高校生ラッシュが終わり、やっと一息つく。
なんなんだ、この目まぐるしさは…。
「大丈夫…?」
うん、この優しさ。やっぱり俺の妻だ。
「この後ね…薫さんと元さん。もしかしたら相原さん夫妻も」
…おや?
「午前中はそれだけだよ」
…ほー。千種…把握してんの?
「整理するの大変なんだから」
…おまえが犯人、か。
「幸平の疲れ具合でストップするから」
…たいした人気者だな、俺は。
「一週間くらい先まで埋まっているよ?」
…違う意味で旅立ちそうなんだが。
「マネージャーは本業だもの」
意味が違うよな?
・・・
てなわけで…。相原コーチの奥さん、愛理さんにお会いしたり(千種の代わりになかよし水泳会のマネージャー業務を代行されてる。名前に聞き覚えあるし、トップスイマーだったのだろう)、午後はマリーさん夫妻、キャリパー夫妻と会ったりして、本来なら今日はここで終了のはずだったのだが…。
・・・
部屋のドアがノックされ、千種が応対する。
何か話し声が聞こえ、一度扉を閉めた後千種がこちらに来て尋ねた。
「愛と美亜が来たの。いい?」
ああ…。日下部愛と佐藤美亜。あの鈴木不乱と入学時、仲の良かった二人だ。鈴木の凶行は既に俺も聞いていた。彼女はひどい火傷を負い、今も意識不明のまま県内のどこかの大きな(そして監視可能な)病院に入院してると聞く。
鈴木が退学してから交流があったとは聞いていない。…確か初詣でも鈴木に声をかけられなかったと聞いた覚えがある。
「俺は構わないよ。千種は?」
「小学校からの友達だよ」
「断る理由はないな」
「ん」
二人は静かに入ってきて…まず千種に頭を下げた。
「ごめんなさい」
…どのことだろう。
千種はわずかに微笑み
「知らせてくれてありがとうね」
おそらくは事故に遭ったあの日の連絡のことだ。
主に二人と千種で話し、静かな時間が過ぎていく。
「あまり早名くんと話したことなかったけど…」
はい?
「ほんとに千種が待ってただけのことはあるね」
俺に対する今日唯一の褒め言葉だった。
…どうして他のやつらからは雑な扱いされるんでしょうね?
「あたしたちがもっと気にかけてあげられれば…」
「誰って言うか、俺は鈴木も恨んでねえよ」
えっと驚く二人。
「たぶん千種とは考えが違うんだろうけどさ」
千種は下を向き顔を見せない。
「まず生きてほしい。鈴木と話すのはその後だ」
…綺麗事だろうが…それは目覚めた時から変わらない。
「早名くん…」
二人は涙ぐみ…部屋を出た。
「納得できないよな?千種は」
何度も話したことだ。
「あたしは…許さない…」
千種は変わらない。
だから。
鈴木には生きてほしい。
俺と千種にだって意見の対立はある。
だから。
死んで勝ち逃げなんて…鈴木、おまえはまだ語るべきことがあるはずだ。
死の手前から文字通り生還した幸平くんだから意味があるのです。




