出頭要請の公表
「退学って…なんでさ?」
千種ちゃんがベッドの横に座り、私と幸平の会話を聞いている。
「理由はあなたも知ってる通り、千種ちゃんと美也子ちゃんをサナメから外すのよ」
うーん…と幸平。
ここで引っかかることがあるのだろうか。
しばらく経ってから、幸平は口を開いた。
「奇手だよな」
「きしゅ?」
「あやしいて…」
…ああ。
…そうだろうか?
「姉さん、俺たち卒業まであとどれくらい?」
間違いなく2年はない。幸平の出席日数が心配だが。同じだけ休んでいる千種ちゃんも一緒だ。
彼の質問の意図はなんだ?
あの忌まわしいグループの再結成があれば、その欲のスピードは速いはずだ。
「元さんからの提案があって…」
大杉元さん?
まだ面会謝絶のままだ。どの伝からだろう。
「例の出頭要請」
話に聞いた、虫唾の走る手紙。
「世間に出したらどうかって」
実は文面をまだ見ていない。
幸平や千種ちゃんから聞いたことだけだ。
「元さんの頭の良さは姉さん、分かるだろ」
幾度となく「なかよし水泳会」絡みで話している。あの美也子ちゃんをして、「天才」と言わしめた人だ。確かに私なんかよりもはるかに…。
そんな人ですら絡め取ろうとする高良のキイロバナは…人智を超えている。
そして、その御神体が千種ちゃんの中にいるいまは…いったいどんな状況なのだろう。
「俺にはそのもの通りの例えでしか理解できないんだけど…。空きビルを違法で乗っ取って、利益の出る商売を目論んでいる…みたいなものだって」
形骸化。
事実そうのなのだろう。
…あ。
平等に募るのか。
何も盗人どもに平易に渡してやる必要はない。
繋がる。
あの出頭要請は人権に関わるスレスレだ。
日本にどこにでもある地方の一都市だからと、高を括った文書を残した側の「負け」だ。
批判の向きどころは…少なくてもこちらにはない。
盲点だった。
私もサナメにいつしか…あるいは最初から絡め取られていたと言うことだろう。
おそらく公表すれば…その影響は…亡くなったと言え、まず国会議員。人権レベルはまさに論議を呼ぶ。
自分に関係のない事件だ、残りの全議員が批判に回る。
人権より利益誘導を図った時点で、こんな美味しい勝ち馬に誰もが乗るだろう。
だがやり過ぎてビルそのものが崩壊したら?
…それでいいのだ。
サナメの名の下に苦しんだ者はいたと思う。
私たちの両親も…そうだった。
千種ちゃんを見る。
静かな湖を思わせるままの表情で、彼女は頷く。
了、としたのだ。
自らの力が生み出した化け物を、精算してほしい…。
私にはそう見えた。




