姉、葉の告白
弟は眠り続けて一週間後に目覚めた。
私はその間何度も東京と高良を往復し、溜まる一方の仕事を片付け、幸平を見守る生活を続けた。
私も日に日に疲労が溜まっていったけれど、千種ちゃんは文字通り不眠不休…片時も離れず幸平に寄り添い続けた。
愛の深い娘と知ってはいたけど…。
夫婦とか姉弟だとか。
言葉で定義できない絆をこの二人から見て取ることができた。
姉の私にして、千種ちゃんに軽い嫉妬感を覚えるほどだった。
私がこの世に為した行為で、実は一番有益なことなのかもしれない。
この二人は…もう離れられない。
・・・
実はまだ面会謝絶である。
幸平に過度の負担のないよう、しばらくは誰かと会うことを先生から禁止された。
そうするとせいぜい…千紗さん夫妻、和田夫妻…いとこは…認めたくないがあれもか。
仕方がない。
私は番号を検索。は行の某を呼び出し、あなたはぎりぎり面会できる立場なのだと強調して、面会の日取りを設定する。
あの娘らしくなく、やけにしおらしい言葉を繰り返し、最後に感謝の言葉を聞いた時に、私が軽い自己嫌悪に陥ったことを…私は千種ちゃんに告白しなければならないだろう。
年下のはずなのだが…千種ちゃんはこの一週間、巫女のような…女神のような…その佇まいは神聖であった。
彼女への告白は…懺悔に似てるのかもしれない。
幸平が目覚めた瞬間から、また夫婦漫才が始まって、いつもの一人の女子高生に戻ったように見えるのだが。
付け加えるなら。
幸平が目覚めて千種ちゃんと会話のあと…私は夫に連絡した。
シーズン中の、しかもナイター後と言う時間にも関わらずあの人はすぐに電話口に出て、報せを聞き涙声で了解してくれた。
私は彼より年上だけど、この人と夫婦で良かったと改めて思った時間だった。
この告白は…千種ちゃんにもできない、私だけの秘密でいよう。
・・・
私のできることは他にある。
おそらく、サナメを目論む欲深なやつらはいずれまた現れる。今回のメンバーがひとまずこの世から退場したけれど…そもそも早名神社が継続するかも不明だが、既に後継に名をあげた者の噂を聞いたから、私は初手をうつ。
幸平と千種ちゃん、そして美也子ちゃん。
高良高校の退学、そして通信制への編入。
後手ではあるが、確実に3人を高良から切り離す手段。
サナメの資格を外した。
3人は外部の住所になる。和田さんの家に住んでいることになる。
行朝さんは千紗さんの旧姓になり、美也子ちゃんは和田さんの養子となる(華さんとは本当に親子になる)。
千種ちゃんは自動的に千紗さんの旧姓になり、いずれ幸平は千種ちゃんと同じ姓になる。
さあ、早名に固執する者たち。
他にあたればいい。
もはやサナメは…過去のものだ。




