ミコの独白:幕間
愛した男を失ったことはわたしにとって大きなできごとだった。
喪失感、と二千年経った現在では呼ぶものだろう。
長年流浪の後、やっと異国に安住の地を求めたはずが、やはりわたしたちは異入の民だ。
富と人。
それを狙う者ども。
戦うしか術がなく、あの人を失い我が力を示してやっと混乱は収まった。
わたしの異能を原住の者どもはおそれ、奉り、神輿として担ぎ上げた。
既に生きながら亡骸のようにあったわたしはすべてを受け入れ、やがて海の向こうの大陸の国に朝貢し、金印を得た。
なんの価値も感じなかった。
近従の男が一人、わたしの意思と称し自分の思いのまま連合体を支配した。
好きにすれば良い。
そうやってわたしは老い、自分の死すら気づかなかった。
この地に住まわせてもらった。
この大地に最低限の感謝と印を。
まだ男が生きている頃、二つを願った。
すなわち、この地の民に幸運を。
そして…我が故郷の花がここに咲かんとせよと。
この願いは誰やらに聞き入れられたようで、我が民は他の文化と混じり合いつつも、独自性を失わず二千年近い時が過ぎた。
花もまた、ここでのみ自らの命を繋ぎ続けた。
だがいつしか我が願いは呪いとなり、この地を縛り付ける鎖と変容した。
キイロバナだけが変わらず咲き続けた。
微睡んでいるわたしを起したのは、わたしより遥かに強い力を内包した娘。
似たような力ゆえ、それに誘われるようにわたしは目覚め…気が付くとその娘と同化していた。
聞いたことのない事象に始めこそ戸惑ったが、娘の性向は常に優しく、居座るには心地よい。そしてこの娘と恋人関係にある男もまた、常に娘を思いやっている。子供のいなかったわたしにとって二人は子供のようでもあり…男をめぐるじゃれ合いの相手でもあった。
娘は対話で現代を教えてくれた。
ずいぶんと道理が優先される時代となっていた。
同時にかつて願ったこの地の平安が変容し、一部の者どもの利益となっている事実。
げにひとはおろかな。
この二人にそれが及ぶのなら解呪しよう。
密かに決めた。
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