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高良フェノミナン2nd  作者: カラー
第2章:死に近づく幸平

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予兆

 嫌な夢を見たような気がした。

 夜中に目を覚ますと、千種は二日続くこの感覚をおかしく思う。

(今までこんなことなかったのに)

 自分はあまり寝汗をかかない体質なのに、昨夜にもまして今夜は下着が肌にまとわりつく。


 隣で寝ている愛しい人は、今夜どんな夢を見ているのだろう。起こさないように、そっと髪を触る。この習慣を本人は知らない。

 小学校卒業間近で両親を失い、残った唯一の肉親すら遠くにいて、一人でずっと立ち続けてきた人。あたしを受け入れてくれて、いつも誰かを思いやって…そしてあたしだけを見ていてくれる。

 長い間育んだ理想を彼は体現してくれている。

 彼の愛にどれだけあたしは答えていけるだろう…。


 そうやって髪を撫で…。


 苦い?


 手の感触に味覚などないことは重々承知しているが、苦いとしか形容の仕方ができない違和感…そう、違和感がピリピリと自分の手から腕、そして頭の中に流れ込んでくる。


 なんだ、これは。


 こんなこと生まれてから感じたことがない。強いて言えば、結菜の母のことを聞いた時に感じたものに似ている。

 だが今回のそれは…段違いにはっきりとした違和感を伴っている。


 どうして、夫から?


 顔はいつもと変わらない。寝息のリズムは一定だ。体調も…変化がないように見える。

 良かった、とそれでも念のため脈を…。


 なに、この早さ。

 通常の倍で心臓が脈を打っている。

 人が寝ている時は、通常時より脈が遅くなるはずではないのか。

 明らかに異変だ。


 10秒考え即断する。

 観察、把握、対応、そしてまた対応。


 正確を期するためタイマーを用意し、10秒、30秒、60秒…。脈の数を数える。


 本当に倍だ。

 本人が苦痛を訴えていないから、眠りを妨げるほどの変調を本人が自覚しているわけではないはずだ。

 襲ってくる不安感、恐怖感を振り払いながら、千種は彼を抱きしめる。


 あなたをどこにも行かせはしない。


 ・・・

 両親は既に隣の県にいる。この場に頼れる人はいない。

 自分が。

 自分が。

「ごめんね、あなた」

 小さく一度呟き、幸平を軽く揺さぶる。

 起こそうとした。


「ん…」

 すぐに幸平は目蓋を開いた。

 早すぎる。

 眠っているのではなく、これでは起きているのと変わらないではないか。


「苦しくない?」

 千種は幸平に悟られないよう、努めて平常時と変わらないトーンで話す。


「うん?んー。どうした?」


 なんであたしを先に気遣うのよ!

 この人はいつもこうして…。


 千種はその時、自分の持つおかしな力…ミコよりも強いと言わしめた()…を、愛する者のためだけに利己的に使おうと決めた。

 決して頼らずに発露もさせないと決めた過去の自分を裏切ってもいい。


 あたしはこの人のためだけに生きている。


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