男子水泳部
日々俺の印象が悪くなっている気がする。
千種の持つ超越的力のせいか?
「そんなわけないでしょ。自分の行いを反省しなさい」
さっきからしてるけど、それくらいしか思い浮かばないんだ。
「それは反省じゃなくて振り返り」
沢村の恋の成就を見守った後、首を捻りつつ水泳部へと向かう。
男子水泳部は今日からが本番だ。
プールに併設された小部屋にはこの前挨拶した中川、仁田、根津、野村の4名と相原コーチが既にいた。
「遅かったな、幸平」
ちょっと野暮用でして。
こんな時必ず現れる千種は…いるはずないか。
よし。
悪い印象を少しでも払拭するチャンスだ。
「改めて…君たちと同じ男子水泳部に今年から所属する早名幸平です」
おお…と声があがる。
「先輩、泳げるんですか?」
おや?去年の日本選手権者だとコーチが…。
「その…先輩の彼女?から聞いたんですけど、助っ人だから問題起こったときの生贄だって」
ほほーっ。
誰から聞いた?えーと…
「中川保です。すっごい美人の…髪に黄色いリボンの」
中川くん。
「はい?」
そいつはたぶん俺の知り合いじゃない。
「そうでしたっけ?視聴覚室で先輩と夫婦みたいに仲が良く見えましたが」
気のせいだ。
「気の…せい…」
「俺たちもクラスのすっごい美人から注意されましたよ」
二人が顔を揃えて言う。
仁田一成、根津雄と言うのか。
で、なんと?
「男にも女にも見境ないから、お尻だけは気をつけて、だそうです」
ほほー、ほほー。
「俺も隣の席の子に、姉をたぶらかせて隣の県のこの学校に来させてその上で振ったって」
シルバーアッシュの…
「なかよし水泳会の橋本由麻さんです」
野村くん。
「はあ」
世の中には知らなくていいことが山ほどあるんだ、分かった?
「よく分かりませんが…分かりました」
「なあ幸平」
なんですか、コーチ。いろんな方向から槍で刺されて瀕死なんですけど。
「今の話なんだが…嫁の千種くんと橋本結菜さんだろ?で、中学のときおまえにずっとくっついていた美人が、六条美也子くん…だよな」
風評はともかく、確かにそうです。
「おまえ…一年で変わったなあ」
絶命に値する一撃、だった。
・・・
なんとか誤解をとき、今後の方針を確認する。
中川くんは自由形中・長距離、仁田くんはバタフライ、根津くんは平泳ぎ、野村くんは背泳ぎだそうだ。全員が全中で入賞レベルのタイムをもち、県外組だと言う。まさに水泳をするためにここに来たようだ。
良くも悪くも中途半端な俺とは、覚悟が違いそうだった。
じゃんけんで初代主将を決めてもらった。俺は半分も練習に参加できない責任者だからな。
千種の説明が当たってるわ。
その後軽く練習に付き合ったのだが…どの種目でもまだ後輩くんたちに先着できたのは、彼らが受験とか入学で練習量が足りていなかったからに過ぎない。夏に向けて彼らが本格的にトレーニングしたら、あっと言う間に抜かれるだろう。
自由形短距離だけは今年くらいなら、まだ俺も負けないだろうが、来年は…無理かもなあ。
一章の最終話を3エピソード分ずらして、今話にしました。




