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高良フェノミナン2nd  作者: カラー
第1章:春の頃、人が来たりて為すことぞ

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13/16

千種の逆鱗

 最内校と新人の留学をすることが決まった次の日に、明るい茶に髪を染め直した橋本結菜に相談を受けた。

「マネージャーが必要だと思うんだ。どう?」

 マネージャーって今だっているだろ?あの嫉妬深くて、いつも俺を虐める。

「ついでに可愛くて、旦那さん思いの優しい奥さんも追加してね」

 自分で言うか、千種。


「あなたたちのじゃれ合いを見たいわけじゃないの」

 あっさりと結菜は次に話を進める。

「なかよし水泳会に千種が比重を置くじゃない?活動の時間がずれることが多くなるから、最低でも一人は必要なの」

 あんだけ希望者がいたんだから、一人くらいマネージャー志望の一年生いないのか?

「今のところはいないのよね。ほらミーティングの後で挨拶した人たち。あの人たち以外はみんな部にするか、コースにするか保留中なんだ」

 あー、ブームみたいなものか。相原コーチがきちんと説明したから、競技と体力作りの違いを決めかねてるんだ。


 千種が二人分は…さすがに無理だな。俺なりに想像すると新人マネ二人でやっと千種一人分だと…。

「そう思うけど、まずは一人でも見つけなくちゃ」

 そっか…結構切迫した話だな。かと言って早々簡単に…。


「あたしやろうか?」

 おっと…キントキさん?あなた女子ウェイトリフティング部じゃ。

「廃部になったの」

 え、そうなの?

「あたし一人しかいなかったから」

 去年一年よく存続したな。

「なにもしなかったから…」

 プラスもマイナスもなかった、と。そりゃ廃部になるわ。

「何かしたかったんだけど、2年からじゃ恥ずかしくて」

 なら、野球部はどう?折井しかいないぞ。あいつなら歓迎してくれるさ。沢村もいるし。

「光秀くん?関係あるの?」

 無神経なことを言うなと千種と結菜に目で威嚇される。おまえら二人が揃うと迫力が違うな。


 まあヒメさんとマロさんがいるしな。

「幸平くんも…」


「キントキ」

 低く千種が声を出す。あ、千種のスイッチ入るぞ、これ。

「幸平くんはね、千種の脚しか見えないのよ」

 橋本が助け舟を出した。ただ…まあそうは言うなよ。

 業を煮やしたのか、千種は

「沢村くん、ちょっといい?」

 明らかに強い調子で沢村を呼んだ。千種とは小学校から同級生の沢村は、そんな千種を見たことがないのだろう。話していた黄田や田所をそのままにして、慌ててやって来た。

「なんだ、早名」


「キントキが野球部のマネージャーしたいんだって。それと、あなたキントキと付き合いなさい」

 二人とも「はあ?」と声を出したまま、動かずにいた。

 スイッチが入るとか、そんな次元じゃない。俺も数回しか経験のない、お怒りモードの千種じゃん。

 ……キントキさんは無自覚だったと思うが、あの態度が千種の逆鱗に触れたようだ。千種は間違っても他人に行動を指示するタイプじゃない。他人でない俺にはうるさいけど。


 橋本なんか、特徴的な切れ長の目を丸くしてるぞ。

「幸平、ちょっと来て」

 沢村もキントキさんも、結菜さえ置いたまま、千種は俺と教室を抜けたのだった。


無自覚は強敵と自覚する千種ちゃん。

このお話で第一章終了です。

それと短編「おまえとの10個の約束」の2話目「1つ目の約束」を本日中に投稿予定です。よろしければそちらもどうぞ。

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