表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
潮路の薬師は王都の毒に笑う  作者: お試し丸
2/5

第2話:王都への道

港町・潮路の朝は、潮の匂いと漁師の声で始まる。

昨日の使節団の症状が港中で話題になっていたが、私にはそれ以上に気になることがあった。薬の痕跡だ――王都由来の特殊な調合痕跡。


父は静かに朝の支度をしていた。

「雫、行くか。王都に行って調べるなら、早めの船に乗る方がいい」

私はうなずく。港の商人・柳も同行することになった。彼は情報網と交易ルートの知識で、私の調査をサポートしてくれる。


「雫さん、王都まで案内は任せて」

柳は船の舵に手をかけながら言った。

「港のどのルートで薬材が来ているのか、全部見せてもらおう」


船は潮の光を受けてゆっくりと進む。港の倉庫や乾燥薬草の匂い、青緑の波が混ざり合う景色を眺めながら、私は症状のパターンを整理した。


高熱と関節痛の発症は同時期


倒れた順番と摂取した薬材に微妙な差


特定の成分の摂取順序が症状を変えている


「やはり偶然じゃない。計画的だ」

私は独り言をつぶやいた。柳はニヤリと笑う。


船旅の途中、私は王都役人・麟の噂を耳にした。

若くして調査役を任される鋭い眼光の持ち主で、港町での事件の調査にも興味を持っているらしい。

「面白いことになりそうね……」


王都に着くと、街は活気に満ちていた。高い城壁、行き交う官吏、薬屋の看板。港町とはまた違った匂いがする――いや、匂いではなく、色と光だ。


役人の麟は、私たちを控え室に通すと、静かに言った。

「雫さん、港での事件、詳しく聞かせてほしい」

私は状況を整理して説明する。倒れた使節団の症状、共通点、港の薬材ルートの情報……。

麟はメモを取りながら、時折鋭い質問をしてくる。


「これは……ただの疫病ではないな」

麟が呟く。

「薬の痕跡が残っている。それも計算された形で」

私は頷く。港で確認した薬材の配合、量、摂取順序が症状に対応していることを説明した。

「王都から来た薬材のルートが関わっている可能性が高い」


麟は少し驚いた顔をしたが、すぐに目を細める。

「なるほど……協力してもらえるか?」

私は肩をすくめ、軽く答えた。

「もちろん。だけど、王都の闇まで踏み込むつもりはない。薬師として、症状と薬を見極めるだけ」


その日の夕方、王都の宿屋で調合ノートを開いた。

赤い結晶、緑の粉末、黄金液体――港で確認したものと同じ。

手触りと色、液体の粘度から、微量でも効果の差が生じることがわかる。

「順序を誤れば致命的。順序を守れば救命」

独り言を繰り返す私の耳に、麟の声が届いた。

「雫さん、港での情報と王都の薬材を照らし合わせると、陰謀の一端が見えてくるかもしれない」


港で出会った海商・柳と、王都の役人・麟。二人の協力で、私は初めて港を出た“外の世界”で、薬と毒の関係を追うことになる。


夜の王都は、港とは違った静けさがあった。

街灯の光が石畳に反射し、宿屋の小窓からは人々の息遣いが聞こえる。

私は薬箱を開き、明日以降の調査のために備えた。

港での小さな事件は、王都の大きな毒の影――まだ見ぬ陰謀――への序章に過ぎなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ