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箱庭の終焉、その鍵を君が持っていた  作者: 桜柚
第3章 【干渉者編】
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微かな真実と闇【4】


「ストップ。一先ず補給も兼ねて近くの街に向かうから。リテアは馬車に戻って」


リテアはリーグの言葉に目を瞬かせる。


「街? 近くにあるの?」


「うん、あるよ。ちょっと距離はあるけど立派な街がね」


「ふぅん……」


「待てよ。俺は行くの反対だからな!」


そう言ってロランはダン!と足を踏んだ。それにリテアは眉を寄せる。


「何か嫌なことでもある訳?」


「いや、そういう訳じゃない。ただ……」


「ただ?」


「行きたくないというか。何というか……」


目線をそらしロランはハァ、と息を吐いた。


「副都にはあまり寄りたくないんだ」


「何で」


リテアは尋ねてみるが答えは何も返ってこない。それを横目にリーグが笑みを零した。


「何故そこまで嫌がる必要があるのさ。自分が治める領地だろう?」


嫌味と笑みを讃えながらさらりと言ったリーグにロランは余計なことを言うな!と抗議の目を向ける。一方、リテアは軽く固まりかけ口をポカーンと開けていた。


「……今、何て?」


ロラン(こいつ)が治める街、そう言ってなかったか?笑顔で肯定するリーグにリテアはさらに衝撃を受けたようにロランを見る。


「このお馬鹿なナンパ野郎に街を治めさせてるなんて、ありえないわ!」


ビシィ!と指を差してそう叫ぶリテアにロランは眉を寄せた。


「酷い言われ様だなぁ。俺は、これでもなかなかのやり手なんだぜ」


「女性の口説き方が?」


「そうそう……って、違う! 政に決まってるだろうが!!」


腰に手をあて息をつくロランにリテアは困惑に似た表情になる。


「アンタにそんな資質があると思えないし。それに、」


自分の領地なら何故嫌がる必要があるのよ。堂々と帰ればいいじゃない。と、至極真っ当な指摘をされた。


「それは……」


ロランはもごもごと口を動かすが言葉にならず消えていく。それにリテアはニヤリと笑みを浮かべリーグに振り返った。


「じゃ、早くその副都に向かいましょ。なんかすんごい気になってきた」


「あぁ、良いよ。早く馬車に乗って乗って」


楽しそうにリテアに頷くリーグをロランは慌てて止める。


「何?」


「何? じゃねぇよ! 副都には()()()がいるだろう!? 別にあの街じゃなくても…」


「私的には()に会いたいんだけどもね」


リーグは満面の笑みでロランの意見をはねのける。


「……お前さ、俺の味方だよな?」


「うん? いつでも私は、自分の味方だよ」


ロランは力無く地面に頭を垂れ、荒れ狂う感情を地に向けてダンダンと叩いた。


そうだ。こいつはこういう奴だった。ロランはそう察するが、どうしてか自分に有利に働いてくれるだろうと期待してしまう。


「ロラン見てると飽きないんだよね。退屈な軍生活も何かと面白くなるし」


ロランの心情を知ってか知らずかリーグは飄々とそう言ってのけた。それにリテアは眉を寄せる。


「何? あんた、そんな理由で軍人辞めないの……?」


「うん、そうだけど。何か、問題でも?」


にこにこと笑うリーグにリテアは思わず言葉を失う。絶対にこいつ、敵に回したくない。リテアは本気でそう思った。







そんなリテア達のやり取りを馬車の上で眺めていたホヴィスは深々と息を吐いた。


「………何やってるんだか」


胸元から取り出した煙草に火をつけ口に咥える。そして微かに目を細めた。


≪だーんな! 何考えてるのさ?≫


「……いや、ちょっとな」


≪もしかして、橋が崩壊した理由を考えてるの?≫


「さてな」


そう呟いてホヴィスは崩壊した橋を見つめる。

あの崩壊は自然に起きたものではない。誰かが意図的に起こしたものだ。だとしても、一体誰が?

ふいに刺すような視線がホヴィスに届く。


「ッ、!?」


驚き立ち上がり周囲を見渡すも、自分達以外に人影はない。


「あの感じ……」


≪だ、旦那? どうしたのさ?≫


いきなり立ち上がったホヴィスを見上げキッシュは不思議そうに首を傾げる。


「……キッシュ。お前は気づかなかったのか?」


≪え、何が?≫


尾を振りさらに首を傾げるキッシュにホヴィスは何でもないと手を払い、再び馬車の上に座った。


だが、視線は周囲に向けられたままだ。


「――ッ、」


いつもとは違うホヴィスの様子にキッシュが再び声をかけようとしたその時だった。


「君達ー、早く馬車の中に戻ってくれないかな? 今から出発するから」


リーグが笑顔で緩やかにそう声をかける。それにキッシュは頷いた。


≪うん、分かったー。ほら、旦那。行こうよ≫


「……あぁ」


キッシュに促されながらホヴィスは馬車の上から降りる。しかし目線を橋の崩壊場所から反らすことは決してなかった。






◇◇◇





馬車が走り去った崩壊した橋の上――


「………ハッ、相変わらず鋭い奴。昔から勘が良いからなぁ」


壊れた橋の上に乗り頭をガシガシとかいて紅髪の青年ーーイフォラッドは口端を吊り上げた。


「遊びはこれからだ。()()()。俺の焔から、無事に逃れることが出来るかな?」



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